人生を豊かにする経済とお金の学校 グローバル資産形成学院

人民元切り上げを巡る話題

  • 投稿日:2010年4月7日

いつ、どれくらいの幅で、どのように。。。いよいよ秒読みの感じになってきました。

WSJ

米、為替報告の発表延期=中国との交渉に期待

【ワシントン】ガイトナー米財務長官は3日声明を発表、15日に予定されていた半年次為替報告の発表を延期することを明らかにした。しかし、中国は人民元売り・ドル買いの大量市場介入を行っているとし、市場志向型の為替政策に転換する必要があると訴えた。

同長官は、発表延期の理由として、今後3カ月間米中間の高官レベルの会合が相次ぐことを挙げ、「現時点では、これらの会合が米国の国益の実現には最善の道である」と述べた。米中間では、今月の20カ国・地域(G20)財務相会合、5月の米中戦略・経済対話、6月のG20首脳会議など、一連の対話の機会が設定されている。

  議会では、中国は輸出競争力をつけるため元を意図的に低水準に抑えており、為替報告で中国を為替操作国として認定すべきだとの声が強まっている。議員の間では、中国が為替を操作しているため、米国の対中貿易赤字が大幅となり、米国の雇用を減らしているとの不満が募っている。

 ガイトナー長官は声明で、中国を為替操作国と名指ししなかったものの、「中国は元のペッグ制を維持するために、大量の為替介入がますます必要になっている」と指摘。さらに、「中国の為替レートは柔軟でないため、他の新興市場国は自国通貨を切り上げるのが難しくなっている。中国がもっと市場志向型の為替政策に移行すれば、世界経済の不均衡是正に不可欠な貢献を果たすことになる」と期待を表明した。

 米政府当局者は、中国が元の上昇を容認する意向を示唆していると述べ、為替報告の発表延期はもっと生産的な対中交渉を可能にさせるとの見方を示した。ガイトナー長官は2日テレビ・インタビューで、中国は為替問題を前進させると確信していると語った。

 胡錦涛中国国家主席はこのほど、オバマ米大統領が為替報告発表予定日の直前の12、13の両日に開催する核安全保障サミットに出席すると発表した。

 

胡中国主席、核サミットに出席=為替操作国認定回避へ

【北京】中国外務省は1日、オバマ米大統領が主宰して今月12、13の両日ワシントンで開催される核安全保障サミットに胡錦涛国家主席が出席すると発表した。最近ぎくしゃくしていた両国関係の改善を示すシグナルで、米財務省がその直後の15日に発表する半期報告で、中国が人為的に人民元を低くしている為替操作国と認定される可能性は遠のいた。

胡主席が核安保サミットに出席するかどうかはこれまで明らかになっていなかった。米中関係筋によれば、胡主席は自身のワシントン滞在の前後に米国が中国の面目を失わせるようなことはしないとの確信がなければ、ワシントン訪問に同意しなかったとみられる。

 中国指導部は、外国から対面を汚されたと国内で受け止められかねないことに非常に神経質で、胡主席の核安保サミット出席発表は、財務省が為替報告の発表を延期するか、中国を為替操作国として認定しないと決めたことを示唆している。また、外国から面目をつぶされることがなければ、中国指導部は最終的には元切り上げに向け政治的に動きやすくなると観測する向きもある。

 米議会では、中国は人民元を大幅に低い水準に抑え米国からの輸出を抑えているとして、米政府は制裁行動を取るべきだとの声が高まっており、為替報告で中国がクロ認定されるかどうかが注目されている。

 上海にある証券会社CLSAアジア・パシフィック・マーケッツのストラテジストで、米国の元外交官であるアンディー・ロスマン氏は「胡主席がワシントンを離れた直後に中国が為替操作国と名指しされれば、イスラエルがバイデン米副大統領の訪問中に東エルサレムでの入植地拡大を発表した以上の政治的な侮辱とみなされるだろう」と指摘。その上で、米政府が中国をクロ認定しないと決めたのはほぼ間違いないと述べた。

 米国が1月に台湾向け武器売却を決定し、オバマ大統領が2月にチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と会談したことに中国が激しく反発し、両国関係はここ2、3カ月間悪化していた。しかし、オバマ大統領はこのほど、中国との関係を「前向きのものにしたい」と表明、一方中国は、国連安保理での対イラン追加制裁決議に関する協議に参加することに同意した。

大和総研

プラザ合意以降の日本と最近の中国

人民元切り上げの是非が再び脚光を浴びてきている。欧米は中国に対するプレッシャーを強めつつあるが、中国は、プラザ合意後の日本の失敗を繰り返すまいとして、人民元の切り上げを回避しようとしている面がある。確かに、日本は、プラザ合意後の円高と内需拡大要請に直面して、金融緩和を長期化させることで資産価格バブルを発生させ、その後のバブル崩壊による後遺症に長い間悩むことになった。最近の中国は、国際金融危機後の世界景気の後退に対処するために大型景気刺激策をとり、その副産物として資産価格バブルに直面している。しかし、株価、地価の上昇はすでに問題として認識されており、対応も図られつつある。今後は、日本の経験も参考にしつつ、人民元の高
め誘導を含めさまざまな政策が採られるだろう。

プラザ合意以降の日本

まず、プラザ合意後の日本の状況を概観してみよう。1985 年9 月22 日、G5 蔵相・中央銀行総裁会議が開かれ、ドル高是正に向けて為替市場へ介入することで合意した。
その結果、円ドル・レートは240 円前後から3 年間で120 円前後へと、大幅な円高となった。円高不況に対処するため、公定歩合は2 年間で5%から2.5%に引き下げられ、財政再建が維持される下で、円高の阻止が求められたこともあって、その後2 年間その水準で据え置かれた。87 年から89 年までの実質短期金利は実質経済成長率などに比べてかなり低く保たれた。この間、銀行貸出の伸び率は法人向け不動産関連融資を中心に高まり続け、87 年第2 四半期以降窓口指導などによって貸出の抑制が図られたが、不徹底であった。消費者物価の上昇は、90 年代初めにピークを迎えた時点でも3%台と限定的なものにとどまったが、株価、不動産価格が急騰した。85 年9 月から89 年12 月までの4 年強の間に株価は3 倍となり、85 年9 月から90 年9 月までの5 年間で地価(市街
地価格指数)は4 倍となった。87 年から91 年の平均実質経済成長率も5%を超えた。
しかし、80 年代後半の時点で、こうした現象がバブルとの認識は希薄で、官民とも、また、資金の貸し手、借り手とも将来に対し楽観的であった。
株価は89 年12 月、地価は90 年9 月あたりにピークを迎え、その後下がり続けた。その結果、日本経済は景気後退局面に入り、設備、雇用、債務の過剰の調整が始まった。
その中でも、特に、債務の過剰の調整が重要で、その調整にはその後約15 年を要することとなった。非金融法人の債務は95 年あたりまで若干増え続けた後、95 年度末から2005 年度末までの10 年間に608.6 兆円から382.6 兆円まで226 兆円減少した。その内、4 割強の100 兆円が金融機関によって不良債権として処理された。
ところで、消費者物価がマイナス基調となったのは90 年代半ば以降であった。日本と欧米の物価動向の違いは、主としてサービス価格の動きの違いからきている。財の価格の動きに関する限り、若干低下基調であり、日本と欧米の間で大きな違いはない。

一方、サービス価格については、日本ではまったく上がらない一方、欧米では上昇を続けてきている。この違いは主として賃金の動きの差からきていると考えられる。単位労働コスト(ULC)をみると、先進国で下がり続けてきたのは日本だけである。ひとつの重要な要因と考えられるのは、90 年代半ばから最近まで続いた企業による債務削減の動きである。この間、企業は設備投資を大幅に上回るキャッシュ・フロー(減価償却プラス税引き後利益)を確保し、その一部は配当の引き上げや自社株買いなど株主還元に使われたが、その多くは債務返済に使われたと思われる。その分、賃金が抑制されることとなった。つまり、バブル崩壊後の調整がつい最近まで続き、その調整がデフレの大きな
要因となった可能性がある。
通貨切り上げの元ともなった貿易収支の黒字は86 年以降90 年まで縮小したが、その後、90 年代を通して一進一退となった。貿易摩擦は直ぐに消えたわけではないが、徐々に沈静化の方向に向かった。2000 年代に入って以降、貿易収支の黒字幅は徐々に小さくなってきたが、所得収支の黒字が拡大してきたこともあって、経常収支の黒字は続いてきた。この間、日本の対アジア輸出依存度が上昇し、対外直接投資が拡大していったこともあって、対米輸出依存度が急激に下がっていった。昨年の対米輸出比率は16%、対アジア輸出比率は54%となった。85 年時点での対米輸出比率は37%だった。

中国の現状

G20 体制の中で現在焦点となっているのは、国際金融危機が峠を越えたこともあって、国際的不均衡是正となり、その中心となっているのが中国の貿易・経常収支黒字の削減と、米国の経常収支赤字の削減である。中国と同様、大きな経常収支黒字を記録してきているドイツ、日本については最重要の論点とはなっていない。最近、米国において家計貯蓄率の上昇がみられることもあって、議論の焦点は中国の内需拡大と人民元の切り上げとなってきており、特に、国際的な議論の焦点は人民元である。
2005 年に対ドル高め誘導が始まって以降、人民元は08 年7 月までドルに対し2 割強切り上がったが、その後は6.83 元前後で安定的に維持されてきている。通貨安は輸出業者に対する補助金、輸入業者にとっては高い税金のようなものである。通貨の切り上げは少なくとも短期的には輸出業者にとっては厳しい。一方、それは輸入価格を引き下げ、物価を安定化し、消費者の実質購買力を高める効果がある。
一部には、人民元の安定維持のために行われてきている為替市場への介入が過剰流動性をもたらし、その結果として資産価格バブルに陥っているとの見方がある。それは間違いだろう。一昨年末から金融危機の影響で輸出が急減し、そのマイナス・インパクトを相殺するため、中国当局は財政・金融緩和を実施し、昨年の実質経済成長率を9%近くに維持することに成功した。外貨買い・元売り介入を続けることで供給される国内流動性は、人民銀行が過剰と判断すればいくらでも吸収することはできる。預金準備率のさらなる引き上げ、準備預金に対する金利の引き上げ、売出手形の増発など手段はあるし、当面、それらの発動余地もある。仮に過剰流動性が存在したとしても、それは必
要と判断されたか、致し方ないと判断されたかによるものだろう。資産価格の上昇は、言ってみれば意図的に採られた大型の緩和政策の副産物として起こっているもので、金融ばかりか財政面でも引き締められつつある。
つまり、一昨年末の輸出の急減に直面して、経済成長率を維持するために内需を刺激する必要があった。大型財政刺激策を金融面から支持するためもあって、金融も大幅に緩められたが、その副産物として資産価格が上昇してしまった。しかし、昨年末あたりからは、輸出の緩やかな回復もあって、引き締め余地が出てきている。窓口指導の強化、各種金利の引き上げ、さらには、不動産融資に関する規制強化などが徐々に実施されるだろう。無論、一方で成長率を目標水準以上に維持しつつ、他方で資産価格バブルに対処することは至難の業だろう。しかし、日本のバブルと違い、すでに問題として認識されており、対応は図られつつある。株価、地価は06 年以来3 倍から3.5 倍になっており、日本のバブルにほぼ匹敵するが、中国の現在の成長ポテンシャルからすると、バブルの深刻度は当時の日本ほどでもないだろう。もっとも、地価の上昇は公式統計以上に上がっているとの見方もあり、予断を許さない面はある。

人民元の高め誘導も、物価上昇率が上がりつつある状況下で有力な政策手段のひとつだろう。金利が引き上げられ、人民元の緩やかな高め誘導が始まることになると、さまざまなルートを経由してホット・マネーの流入がありうる。その場合、人民銀行の介入が一段と拡大する可能性があり、それはそれで問題なしとはしない。一方、急激な人民元の切り上げは元高不況をもたらす可能性があり、採りうる手段とは位置づけられていないだろう。となると、今後の政策としては、為替市場における投機対策としてある程度の切り上げとその後の高め誘導といった05 年の対応に似たものとなる可能性がある。現在、中国当局は、貿易収支と為替レートは関係ないと主張しているようだが、過去のデータで見る限り、貿易・経常収支とその国の通貨の実質実効為替レートは関係がある。多くの国で、通貨が強くなれば黒字(赤字)が減り(増え)、弱くなれば増える(減る)傾向が見られた。
現在、中国にとっての主要輸出市場の回復が緩やかなため、貿易収支の黒字は縮小しているが、欧米主要国経済の回復とともに黒字は再拡大する可能性が高い。人民元の高め誘導が再開されたとしても、日本の場合同様、貿易摩擦が一挙に解消することはないだろう。しかも、日本は中国を中心とした東アジアへの輸出を拡大することで、対米輸出依存度を引き下げることができたが、中国の場合、そうした国や地域が現在のところ見当たらない。欧米その他への直接投資を拡大させることで、直接的な欧米への輸出依存度を引き下げていかざるを得ないだろう。また、日本と違って、賃金の引き上げを図ることで所得の伸びを確保し、消費を活発化させることが重要となるだろう。日本の
場合のように、企業部門が長期にわたって債務を返済する状況に至っていないならば、それは可能ではないか。また、それは、投資に過度に偏った成長を是正することにもなるだろう。


  • グローバル資産形成学院WEBキャンパス開校 ネットで学べるオンライン講座
  • WEBキャンパスで開催中の講座はこちら
  • WEBキャンパス会員登録はこちら
  • 資産形成力要請コース