人生を豊かにする経済とお金の学校 グローバル資産形成学院

海外マクロ・コメント

  • 投稿日:2009年12月3日

○ベージュブックは米国経済の「穏やかな改善」を報告

 

2日に発表されたベージュブックでは、冒頭の総括部分で「経済状況は総じて穏やかに改善した(have generally improved modestly)」という表現が用いられた。その次の文章では8地区が「活動のある程度の回復か状況の改善(some pickup in activity or improvement in conditions)」、残り4地区(フィラデルフィア、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ)が「小動きまたは/およびマチマチ(little changed and/or mixed)」と付け加えられているものの、全体の景況判断は1021日に発表された前回の「安定化または穏やかな改善(either stabilization or modest improvements)」に比べて明るいトーンが強まったと考えられる。個別項目を見ても、商業用不動産が「非常に弱いか、多くの場合は悪化(very week and, in many cases, deteriorating)」とされた他は、概ね好転している。具体的には、消費は自動車、それ以外ともに「緩やかに持ち直した(have picked up moderately)」、製造業は「横ばいから緩やかな改善(steady to moderately improving)」、サービス業は「総じてある程度の強まり(generally strengthened somewhat)」、住宅は「非常に低い水準からある程度の改善(somewhat improved from very low levels)」と報告された。労働市場については、「弱いまま(remained week)」としながらも、「安定化の兆しや散見される改善の兆し(signs of stabilization and scattered signs of improvement)」が指摘されている。その一方で、物価については、賃金上昇圧力や完成品の大幅上昇は「ほとんどまたは全く兆候がない(little or no indication)」としている。

 

FRBが「出口戦略」に踏み切るタイミングを考える上では、ベージュブックの「改善」という用語がFRBにとってどのような意味を持つかを検討しておくことが有用であろう。前回の景気後退局面(200111月に底打ち)の後のベージュブックの表現を振り返ると(図表2)、「改善(improve)」という言葉は景気底打ちから比較的近い時期に現れており、直接的には金融引き締めにつながっていない(表中では「improve」が使われた時を薄緑色で表示)。金融引き締めのシグナルと言えるのは、「拡大が続く(continued to expand)」という表現である(表中では「expand」が使われた時を薄黄色で表示)。このため、今回のベージュブックは将来的な利上げの可能性を示すほど強い内容ではなく、「拡大(expand)」という表現が現れるまでは「出口戦略」が近づいたと判断すべきではないと考えられる。

FRBが資産売却を検討?

 

また、昨日の市場ではタカ派的な地区連銀総裁が資産売却の可能性を指摘したことが注目された。ラッカー・リッチモンド連銀総裁は講演後に記者団に対し、「私の考えでは、(出口戦略の)自然な出発点は資産売却だ」と述べた。ラッカー総裁は「時間とともに住宅市場への資源配分から脱却する必要がある」とも付け加えており、これはFRBが購入してきたMBSを売却する可能性を示唆するものと解釈される。また、ブラード・セントルイス連銀総裁はCNBCのインタビューで、FRBは「2010年により多くの資産を購入する可能性や資産を売却する余地を残しておくべきだ」と発言した。ブラード総裁は1122日には景気が悪化した場合の選択肢として来年3月末の期限の後もMBS買い取りの「極めて低い水準での継続を望む」との見方を示していたが、今回は資産売却にも同時に言及してバランスを取った形である。

 

ただし、ラッカー、ブラード両総裁はともにタカ派寄りと目され、こうした資産売却も視野に入れた発言がFRBのコンセンサスとなっているとまでは考えられない。実際、1134日分のFOMC議事録でも、資産売却について以下のような記述があった。

 

異例の緩和策が敷かれている時期からの最終的な脱却という委員会の戦略の一環として、数名の参加者は政策金利の引き上げの前に、あるいはこれと同時に資産を売却することがFRBのバランスシートの規模を縮小させて準備預金の残高を減らすための有用なツールとなりうると考えた。このような売却は、超過準備への付利の、妥当な時期に政策を引き締めるためのツールとしての有効性を強化する一助になり、米国債が支配的な資産であるバランスシートの構成の修復を迅速化する上で役立つと考えられた。他の参加者は特に政策金利の引き上げ決定に先立って資産を売却することに消極的であり、そのような売却は長期金利の明白な急上昇を招き、これが委員会の目標達成を阻害する恐れがあると述べた。さらに、妥当な出口戦略を実施する上ではリバース・レポやターム預金などの他の準備金管理ツールで十分であり、資産は期限前返済や償還によっていずれ縮小していくと考えた。参加者は、可能性のある多様な政策手段と、それが用いられうる組み合わせや順番を評価し続けることで合意した。また、これらの手段の利用や委員会の出口戦略を国民に対してより広範に説明するためのコミュニケーション手法を進展させることでも一致した。」

 

このように、資産売却を支持するFOMCメンバーは「数名(several participants)」に過ぎず、その他のメンバーは長期金利の上昇を懸念している模様である。FOMC議事録の用語では、参加者の数を示す用語は多い順番に「all」、「most」、「many」、「several」、「few」、「one」が用いられる。このため、「several」という用語は多数派を表しているとは言えない。一方、ニューヨーク連銀の金融市場担当責任者ブライアン・サック氏は2日の講演で資産買い取り策が長期金利低下に最大50bpの「望ましい効果」をもたらしたと述べたが、他のメンバーはこうした見方に基づき資産売却が「長期金利の明白な急上昇」をもたらす可能性を懸念しているのであろう。現時点では、資産買い取り策が終了した後に出口戦略にどのように移行するかについては全く決定されていないと考えられる。

 

ADP雇用報告では雇用者数の減少幅が縮小

 

ADP雇用報告では、11月の民間雇用者数が前月比-16.9万人と10月の同-19.5万人から減少幅が縮小したが、市場予想(同-15.0万人)よりも弱い結果になった。ただ、最近ではADP雇用報告と雇用統計の連動性はそれほど高くないため、今回の数字をそれほど重視する必要はないだろう。それよりも本日発表される11ISM非製造業サーベイの雇用指数の方が雇用統計を予測する上では有用と考えられる。当社は11月雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比-10万人と10月の同-19.0万人からマイナス幅が一段と縮小し、失業率は10.2%で横ばい推移すると予想している。

情報提供:バークレーズキャピタル証券株式会社

 


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