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海外マクロ・コメント

  • 投稿日:2009年11月17日

 

バーナンキ議長の講演はハト派的な内容


バーナンキ議長が16日にニューヨークのエコノミック・クラブで行った「経済と政策の見通し」に関する講演は以下の3点から従来よりもハト派的な内容と解釈される。第一に、最近の議長の講演では「出口戦略」の詳細な説明が行われることが多かったが、今回は本文中にそうした言及が全くなく、「金融緩和策を解除する幅広いツールを持ち合わせている」ことに触れた一文が最後にあったのみだった。

第二に、議長は「緩やかな経済成長が来年も続く」という見通しを示しながらも、今回の講演テキストでは「銀行貸出と信用アベイラビリティー」、「労働市場」という2つの「向かい風(headwinds)」に焦点が当てられた。銀行や信用の問題については、資金調達を銀行に頼っている家計や中小企業の信用へのアクセスが限られていることと、商業用不動産の問題が地方銀行に悪影響を及ぼしていることが特に強調されている。労働市場については、2554歳の男性の失業率が10.3%と成人女性よりも悪化していること(議長は雇用削減が製造業、建設業、金融サービス業など男性の割合が高い業種に集中しているためとしている)、1624歳の若年層の失業率が19%に達していること(特にアフリカ系の若年層の失業率は30%)などが懸念材料として挙げられた。今後についても、資金調達が困難でコスト削減を迫られる企業は生産性向上に努めるとみられること、企業は新規採用でなくパートタイマーの正社員への転換や既存の人員の労働時間延長で景気拡大に対応する余地があること、信用の制約から中小企業の発展や起業が抑制されるとみられること、などから「雇用の増加は景気拡大の初期段階において穏やかなものにとどまる可能性がある」としている。

第三に、講演の結論部分では114日のFOMC声明文の「FOMCは低水準の資源稼動、抑制されたインフレ動向、そして安定したインフレ期待などの経済状況が長期にわたりFFレートの異例の低水準を正当化する公算が大きいと引き続き予想している」という文言が繰り返された。10月後半の主要メディアのリーク記事では「FOMC声明文の『長期にわたり(extended period)』という表現が近く変更される可能性があり、その場合はFRB当局者の講演や議会証言で地ならしが行われる公算が大きい」と伝えられていた。今回の講演テキストを見る限り、121516日のFOMC声明文でも時間軸効果を示す表現が維持される公算が大きい。

その一方で、今回の講演ではドル相場に対する言及が行われたことは重要と思われる。具体的には、議長はインフレに影響を及ぼす要因として(1)資源稼動の余剰、(2)インフレ期待、(3)為替レート、(4)原油および他の商品価格を列挙し、高水準の資源稼動の余剰と長期インフレ期待の安定を指摘した上で、「商品価格はおそらく資源集約的なエマージング・マーケット経済を中心とする世界的な経済活動の持ち直しと最近のドルの下落を反映して足元で上昇した」と述べた。ドル安の理由としては「質への逃避」による資金流入の反転が主因としているものの、「我々はドルの価値の変化が持つ意味合いを注視しており(attentive)、最大限の雇用と物価安定をともに促進するという我々の二つの使命に対するリスクを防ぐための政策の策定を続けるだろう。我々の二つの使命へのコミットメントは、米国経済の基調的な強さとともに、ドルが強く世界の金融安定の源泉となることを確保する助けとなろう」と表明した。FRBがドルの強さに貢献するということが表明されることは異例である。これは、FRBがインフレ期待に影響を及ぼしうる要因としてドル安や商品価格の上昇への警戒感を強めていることを示唆するものだろう。

7-9月期の米実質GDPは大幅に下方修正される見通し


10月米小売売上高は前月比+1.4%と市場予想(同+0.9%)を上回ったが、9月分が同-1.5%から同-2.3%へと大幅に下方修正されたことを踏まえるとそれほど強くはない。自動車、建設資材、ガソリンを除く「コア小売売上高」は同+0.5%3ヵ月連続で増加したものの、89月分は合計で0.3pp下方修正されていた(8月:同+0.7%+0.5%9月:同+0.5%+0.4%)。

小売売上高の下方修正に加えて、7-9月期GDP速報が発表された段階では判明していなかった9月分の貿易収支と商工業在庫がBEAの想定よりも弱い内容となったことから,7-9月期の実質GDPは前期比年率+3.5%から1pp程度下方修正される可能性が浮上している。実際、フィッシャー・ダラス連銀総裁も16日の講演で7-9月期の実質GDP成長率が「+2.5%かそれを若干上回る水準に下方修正される可能性が高い」と述べた。FRBが想定している米国のトレンド成長率は+2.52.7%(公式予測での実質GDP成長率の長期予想の中心的傾向)とみられるため、実際に7-9月期実質GDPが前期比年率+2.5%程度まで引き下げられた場合には米国経済の需給ギャップが縮小する状況にはまだ至っていないということになろう。

情報提供:バークレーズキャピタル証券株式会社


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