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今週の米国経済指標

  • 投稿日:2009年8月28日

○米国が景気後退局面から抜け出しつつある追加的な証拠

シカゴ連銀全米活動指数(CFNAI)は7月に-0.746月の-1.82から大幅に上昇した。この指数は85種類の指標に基づく先行指標で、3ヵ月移動平均で-0.70が景気後退局面を示す節目の水準とされる(0がトレンド成長率、+0.7での2年間維持がインフレ加速の目安)。3ヵ月移動平均のCFNAI6月の-2.18から-1.69への緩やかな改善にとどまっているものの、実績値の急回復は米国経済が景気後退局面から抜け出しつつあるというシグナルを送っているように思われる。

○バーナンキFRB議長の再任指名を米金融市場は好感

オバマ大統領は2010131日の任期が切れるバーナンキFRB議長を再任すると正式に発表した。任期切れ5ヵ月前の再任指名というタイミングは通常よりも早く、金融政策の継続性を確実にすることで市場の安定化させようとする意図があったと判断される。実際、25日の米債券・株式市場はともに上伸している。

7月米耐久財受注統計は製造業の循環的な拡大を示唆

7月耐久財受注は前月比+4.9%6月の同-1.3%から増加に転じた。これは、民間航空機が同+107.2%と(6月に同-30.0%と大幅に減少した後で)急増した影響が大きいが、振れの大きい輸送設備を除いた耐久財受注も7月は同+0.8%3ヵ月連続でプラスを維持しており、米製造業に対する需要は基調的に増加していると判断される。

 

設備投資の先行指標とされる「コア資本財受注」(航空機を除く非国防資本財受注)は前月比-0.3%と減少に転じたが、6月分が同+2.6%から同+3.6%へと大幅に上方修正されたことや、受注統計は振れが大きいことを考慮すると、決して弱い数字ではない。図表1で示したように、3ヵ月移動平均の水準でみるとコア資本財受注は明白に底打ちしている。設備投資の急減には歯止めがかかり、近い将来に増加基調へと転じると予想される。

 

また、今回の統計では製造業の在庫調整が進捗していることも確認された。耐久財出荷は前月比+2.0%6月の同+0.7%に続いて増加する一方、耐久財在庫は7月も同-0.8%7ヵ月連続で減少した。その結果、耐久財の在庫/出荷比率は5月の1.91倍をピークに61.87倍、71.81倍と低下し、昨年12月と同水準となった。輸送設備を除く耐久財の出荷と在庫の伸び率格差(3ヵ月/3ヵ月前比年率)は+11.7pp6月の+4.6ppから一段と改善しており、在庫サイクルが生産を押し上げる局面に入ってきたことを示している(図表2)。

 

7月新築住宅販売は4ヵ月連続で増加

 

7月新築住宅販売戸数は前月比+9.6%の年率43.3万戸と市場予想(年率39.0万戸)を大きく上回り、過去3ヵ月分も合計で年率3.4万戸の上方修正となった。4月以降の住宅販売の増加の背景には昨日の本レポートで指摘したような季節要因(気候や学期末)の影響もあるとみられるものの、販売の増加で在庫の圧縮が進んだことはポジティブに解釈すべきだろう。新築住宅在庫の対販売比率は3月の11.3ヵ月から410.4ヵ月、59.7ヵ月、68.5ヵ月、77.5ヵ月と急低下し、今では20074月以来の低水準となっている。新築住宅の過剰在庫の整理が進んだことは住宅着工件数の増加を下支えしよう(図表3)。

8月米消費者信頼感指数は大幅に回復

 

8月米消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)は前月比+6.7pt54.1と改善し、過去2ヵ月間の下落分(-7.4pt)の大半を取り戻した。内訳をみると、現状指数が同+1.6pt24.9、期待指数が同+10.1pt73.5と、先行きの見通しの改善が大きかった。過去の例をみると、実際の個人消費の伸び率との相関が高いのは期待指数の方である(図表1)。これは14日に発表された8月ミシガン大学消費者センチメント指数(速報)は前月比-2.8pt63.22ヵ月連続で低下していたこととは対照的であり、個人消費への懸念をある程度まで払拭するものと言えよう。

 

興味深いことに、8月の所得階層別の消費者信頼感をみると、年収1.5万ドル未満が前月比-8pt1.5万ドル以上2.5万ドル未満が同横ばい、2.5万ドル3.5万ドル未満が同+6.6pt3.5万ドル以上5万ドル未満が同+10.7pt5万ドル以上が同+10.0ptと、所得が高い階層ほど信頼感が高い傾向が明確となっている。一方、過去2ヵ月間(67月)の信頼感の低下局面では、それぞれ同-1.3pt、同-2.2pt、同-10.2pt、同-18.0pt、同-6.8ptと総じて所得が低い階層ほど小幅な悪化にとどまっていた。こうした傾向から推測されるのは、消費者信頼感と株式市場の連動性である。相対的に株式を多く保有する高所得者層ほど6月から7月初めにかけての株安の悪影響を受けるとともに、7月半ば以降の株高の恩恵を享受したと考えられる。実際、株価上昇を見込む消費者の割合は5月の35.4%から631.6%728.5%と低下した後、8月は36.5%へと増加している。このため、今後の消費者信頼感ひいては個人消費において株式市場の重要性は高まっているとみられる。

 

失業率の一致指標として注目される家計の雇用判断をみると、「就職が困難」と回答した消費者の割合は45.1%7月の48.5%から減少した。この割合は3月に48.8%のピークを付けた後、4348%台のレンジで推移している。失業率は6月の9.5%まで上昇基調を続けた後で7月は9.4%へと15ヵ月ぶりに低下したが、すでに労働市場は安定化に向かいつつある可能性が高い。

○米住宅価格の上昇の背景には季節要因も?

 

6月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数(20都市)は前月比+1.39%FHFA住宅価格指数は同+0.5%とともに2ヵ月連続で上昇した。これは一見すると住宅価格の底打ちを示すものだが、季節性によって実態よりも強めに出ている公算が大きい。

 

米国では、個人の住宅売買は気候が温暖で6月の学期末に近い春から夏にかけて増加し、それとは反対に秋から冬には減少する傾向が顕著である。最近は差し押さえ物件が住宅売買に占める重要性が高まっているが、こうした差し押さえ物件の取引は銀行や投資家が中心であり、それほど季節性がない。結果的に、秋と冬の住宅価格は差し押さえ物件の割合が高く、春と夏の住宅価格は個人の通常の住宅売買の割合が高くなることで、季節性が増幅されることになる(差し押さえ物件は通常は20%程度の値引きが行われる傾向が高いことに加えて、住宅市場や経済が低迷している地域の割合が大きい。一方、個人の住宅売買では住宅市場や経済の環境が比較的良好な地域が選ばれる場合が多い)。例えば、NAR(全米不動産業協会)によれば、中古住宅販売に占める差し押さえ物件のシェアは年初が4045%だったのに対し、5月が33%6月が31%7月が31%となっている。その一方で、6月と7月には一次取得者のシェアが30%に達していた。

 

このため、当社は住宅価格のトレンドを判断するには夏場以降のデータを見極める必要があると考えている。ただし、仮に住宅価格が秋に入って前月比で再び下落に転じたとしても、住宅着工や販売がすでに底打ちしていることからみて、住宅価格の下落ペースが再びボトムを更新するような事態とはならないであろう。

○循環的な景気回復が再確認された4-6月期米GDP統計の改定値

 

4-6月期の米実質GDP(改定)は速報と同じ前期比年率-1.0%となった。市場では、月次統計で在庫の大幅な減少が確認されていたことで同-1.5%程度まで下方修正されるとの見方が強かった。実際、需要項目別の寄与度をみると在庫は-0.83ppから-1.39ppへと0.56ppもマイナス幅が拡大した。また、(非住宅)建設投資の寄与度も-0.34ppから-0.59ppへと引き下げられた。しかし、その一方で個人消費(-0.88pp-0.69pp)、住宅投資(-0.88pp-0.66pp)、純輸出(+1.38pp+1.60pp)がいずれも0.2pp程度の上方修正となったことで在庫と建設投資の下方修正が相殺された。今回の改定は、家計と外国からの需要が当初発表よりも強く、在庫削減がより大幅に進展した形となっているため、将来の成長にとってはポジティブな内容と判断される。

 

 

在庫投資の対実質GDP比率をみても、4-6月期は-1.23%1960年以来の大幅なマイナスとなっている(図表2)。また、在庫投資がマイナスとなるのは20084-6月期から5四半期連続だが、第二次世界大戦後を振り返っても在庫投資のマイナスが6四半期以上継続した例はない(これまでは195310-12月期から195410-12月期と20011-3月期から20021-3月期の5四半期連続が最高)。このため、今年後半には企業が再び在庫の積み増しに動き始め、成長率が押し上げられることになる公算が大きい。

 

また、今回は4-6月期分のマクロ・ベースの企業収益が初めて公表された。4-6月期の税引き前企業収益は前期比+5.7%1-3月期の同+5.3%に続いて増加したが、その構成は大きく変化している。1-3月期は国内金融部門の収益の前期比に対する寄与度は+10.3ppに達し、国内非金融部門(-3.6pp)、国外部門(-1.5pp)の悪化を相殺する形となっていた。しかし、4-6月期には国内金融部門の寄与度は+3.4ppに縮小する一方、国内非金融部門は+2.4pp3四半期ぶりにプラスに転じ、国外部門も-0.1ppとほぼニュートラルになっている。米国企業の収益環境は全般的に改善してきたと言えよう。

 

 

非金融企業の収益の増加はプロフィット・マージンの改善に主導されたものだった。4-6月期も非金融部門の付加価値は前期比-0.9%と減少を続けたが、労働報酬は同-1.7%とそれ以上に削減された。この結果、非金融企業の労働分配率(労働報酬/付加価値)は1-3月期の63.2%から4-6月期には62.7%へと0.5pp低下する一方で、企業収益率(税引き前利益/付加価値)は9.4%から9.9%へと0.5pp改善している。図表4で示したとおり、過去において労働分配率の低下で企業収益性が好転した時に景気後退局面が終了することが多かった。在庫調整の進捗が示されたことと併せて、今回のGDP統計の改定によって米国経済が最悪期を脱しつつあることが改めて確認されたと判断される。

 

情報提供:バークレーズキャピタル証券株式会社

 

 

 


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