人生を豊かにする経済とお金の学校 グローバル資産形成学院

2014年8月20日(水) 欧米諸国からの制裁抜きでもロシアが低迷するこれだけの理由

  • 投稿日:2014年8月20日

2014年8月20日(水) 欧米諸国からの制裁抜きでもロシアが衰退するこれだけの理由

 

こんにちは。AOIAフェローのDataと小勝負です。

私は今回の一連の「ウクライナ・ロシア危機」が始まった当初から、ロシアに対してはかなり厳しい見方をしていましたし、AOIAのニュースレター「週刊先読みダイジェスト」などにも書いて来ました。

不幸にしてその後もこの紛争は続き、「マレーシア航空機撃墜事件」まで起こってしまいました。

 

なぜ、ロシアはこれほどウクライナに対して強硬な姿勢を取り続けるのか?

その背景には実は、「やや実力不相応なこの国の大国意識(西欧に対抗できる巨大国家でないと存在価値がないという強迫観念)」と、「今も続く衰退への道」のギャップが大きすぎ、当のロシア人自身がやや冷静さを欠いている可能性が、あるのです。

具体的なデータを基に、一緒に考えてみましょう。

 

最近も金融市場はウクライナ問題をめぐって断続的に動揺しましたが、全体としては楽観的なムードが広がっています。米国の主要株価指数のS&P500種指数は依然として、先月の過去最高値付近で推移しています。

 

 ただ、ウクライナ危機が順調に解決することを期待している人々は、失望する可能性が高そうです。この危機は短期的対立ではなく、長期的な地政学的環境(縄張り争い)の変化だからです。今後少なくても数カ月間、さらには何年間かにわたり、ロシアが脅威となる可能性は低下するどころかむしろ高まる可能性が大きいのです。

 目下の最大の懸念材料は、ロシアが半ば強引に押し付けた「ウクライナ東部紛争地域向けの正体不明の援助物資」です。状況次第ではこれらの「援助物資」が親ロシア派武装戦力の手に渡ったり、輸送部隊の強引なウクライナ入国に伴う混乱がきっかけとなり、「ロシアの治安部隊・軍事組織のウクライナ本国への強制介入」の可能性を懸念する者も、少なからず実在します。

 

 確かにウクライナ側の発表もロシア側とは違い過ぎて完全に信用しきれるものでもなさそうですが、どちら側がより攻撃的かは、「クリミア半島の奇妙な戦争」を思い出せば、素人目にも明らかだと思います。現在のクリミア半島は、ウクライナや国連の承認なしで、事実上のロシア領になってしまいました。

 

ロシアは何を、焦っているのでしょうか?

 

 主な理由は、ロシアが強大化しつつある事ではなく、根本的な脆弱(ぜいじゃく)性そのものが表面化しようとしているためです。世界中の報道では、ロシアへの制裁強化の見出しが踊っています。しかし、こうした措置は、ロシアの国力を支える人口面と経済的基盤への既存の圧力を拡大しているだけです。

 

 ドイツ銀行によると、確かにロシアの所得や天然資源は比較的豊かなものの、株価収益率(PER)の実績値で見ると、同国の株価水準は奇妙な事に過去10年間で一度も、MSCI新興国市場指数の平均に達していません。しかも、この10年には資源ブームの絶頂期も含まれているのです。現時点では同平均の約3分の2しかないといいます。これは、「民間企業への政治家や官僚からの過大な賄賂要求や、政府による企業乗っ取りリスク」も、影響しています。

 

 また、人口動態も大きな逆風です。ロシアの人口はここ数年、出生者数が死亡者数を辛うじて上回っているため、減少に歯止めがかかっているように見えますが、この安定はいずれ崩れる可能性が高いのです。

 

 ソビエト連邦崩壊の時点ですでに、ロシアの出生率も大幅に低下していました。この影響は近い将来どこかで、人口減少再発という形で明らかになる事でしょう。世界銀行によると、ロシアでは15歳から29歳の男性人口が1979年に約1900万人で頭打ちとなり、2012年までに1600万人を割り込んでおり、さらに20年末までには1150万人にまで減少すると予想されています。

 一方、ロシアでの男性の死亡率は依然として高く、世界銀行の統計によると、平均寿命は約65歳に過ぎないのです。米国では76歳なので、11歳も早死になのです。

 

 これは、大きな2つの意味で重要です。まず、徴兵の対象年齢層が減る一方なので、ロシアの軍事力が低下し、安全保障上の懸念が高まります。特に、巨大な人口・経済力・軍事力を抱え日々国力を増強中の中国と国境を接する極東では大きな不安要因ですし、南部で長大な国境を接する中央アジア諸国も、いつまでも今の様な比較的落ち着いた状況が続く保証はありません。

 特に懸念されるのは、中国が北西部在住のウイグル人に対して行っている、宗教的弾圧に近い各種行動の管理と強制・強引な変更要求です。いずれここもテロ多発地帯になる可能性が、現在急激に高まっているのです。

 

 ロシアの出生率低下の結果、ロシアの人口全体が減少する事になります。世界銀行によると、男女合計の労働年齢人口は昨年、1億人を超えていたものの、2020年頃までには9000万人を割り、その後さらに減少が続くと見られています。

 

 こうした人口動態の弱体化が、ロシアの景気と株価を抑え込みつつあるのです。

 

ロシア経済は、天然資源の輸出に大きく依存しています。米エネルギー省によると、石油と天然ガスは昨年のロシアの輸出全体の68%を占めていました。また、燃料関連の輸出額は連邦予算の半分に及びます。現在の原油価格下落は、この国の高コストなエネルギー産業の現状を考えると、国家財政も悪化させそうです。

 ロシア株はここ数年、原油価格との相関性が高くなっていました。ただ、52週間平均で計測したこの相関性も、ウクライナ危機のずっと前である12年初めから崩れ始めています。実際、ブレント原油はこの3年間、比較的安定して推移して来たものの、ロシア株は約3分の1下げています。

 

 すでに、ロシア経済は大きく減速しています。国際通貨基金(IMF)によると、今年のロシアの経済成長率は、BRICS諸国(同国のほかブラジル、インド、中国、南アフリカ)の中で、最低になると予想されています。

 今後、北米地域でシェール革命が継続するようなら、ロシアが過剰依存しているエネルギーの国際価格が下落する恐れもあります。さらに、このところエネルギー部門への投資資金が引きあげられ、比較的安定し、北米で多く発見されているこのシェール部門へと注ぎ込まれていますが、こうした傾向は今後さらに加速するとみられています。

 

労働力減少に加え、こうした圧力を相殺するには、生産性を向上させるしかありません。しかし、単位時間あたりの国内総生産(GDP)でみると、ロシアは2012年の場合、経済開発協力機構(OECD)平均の半分程度しかありません。その割には「先進国水準」を求めがちな国柄なのも、実は課題と言えない事もないのです。

 

 何しろロシアは、「恋人とのデートでは、男は高級車を借りてマイカーと称してドライブするのが半ば当然」というお国柄ですが、これでは見栄と現実(実力)の格差が巨大化する一方で欲求不満がたまり、どこかで強引な行動に走りがちです。

 

改革(ロシアに対する強気筋はいつもこれを言うが)は、確かに希望の言葉ではあります。

しかし、そのきっかけは実はそれほど見当たりません。調査会社レベダ・センターが実施した最新の世論調査では、プーチン大統領の支持率が過去最高に近い高さとなっています。独立系の世論調査会社の調査結果も、実は似たようなものなのです・・・・。

実に困った事です・・・・。何に反省してよいのか、未だに分からないのでしょうか??

 

人口動態的にも経済的にも困難の高まりに直面している一方、今年に入ってからの強気な外交姿勢に対する国内の高支持率を意識しているため、ロシア政府は早い時期に地政学的な立場(縄張りの広さと支配力)を最大化したいと考える可能性があります。まさかと思う方もいるかも知れませんが、「ロシアの軍事勢力による本格的なウクライナへの侵入」を懸念する欧米の政治家・実業家・メディア・投資家は、決して少なくは無いのです。ロシア政府にとっては、ウクライナがいずれ北大西洋条約機構(NATO)に基地を提供する可能性があると考える事すら、絶対に受け入れられない条件だからです。

 

 しかしそもそも欧州連合(EU)も北大西洋条約機構(NATO)も、「ウクライナを加入させる予定は無い」と発表し、ウクライナ政府側も「両組織への加入は長期的な検討課題かも知れないが、当面は時期尚早」と発表しています。ロシアにとってはこれで当分、充分ではないでしょうか?

ロシアはそろそろ「妄想国家」から卒業すべきでしょう。

 

地政学的リスクは、今後もロシア自身の経済と資産価格を今後数年間にわたり、圧迫し続ける事でしょう。しかし、その規模や地理的位置と巨大な国土面積、そして商品市場に占める中心的な地位のため、ロシア問題の影響は国境沿いの国々だけにとどまりません。ロシア政府は、大国として君臨したいという野望と経済的基盤の弱体化との間でバランスを取ろうとしている様ですが、その結果として、欧州を中心とした世界の市場と景気も、断続的な打撃を受け続ける事になりそうです。

 

『最近のマーケット情報や、実用情報を知りたい方はこちらをクリック』
https://argo-navi.net/mielca_aoia/PublicMailMagazineEntry.aspx?no=3

 

今回は、以上になります。

 

【※】当ブログ記事は、AOIA株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料は、飽く迄もAOIA株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。当資料中に記載している内容、数値、図表、意見等は資料作成時点のものであり、今後予告なく変更することがあります。当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。当資料をもとにお客様が金融商品取引行為を行われた場合、金利、通貨の価値、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として生じる利益あるいは損失は、すべてお客様に帰属します。


  • グローバル資産形成学院WEBキャンパス開校 ネットで学べるオンライン講座
  • WEBキャンパスで開催中の講座はこちら
  • WEBキャンパス会員登録はこちら
  • 資産形成力要請コース