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2013年2月11日(月) 躍進するタイの近未来のリスク「王位継承問題」と、東南アジアで急成長中の大国フィリピンについて(上)

  • 投稿日:2013年2月11日

こんにちは、20年近く前からタイにも関心がある、AOIAコラムニストのDataと小勝負です。多くの方にとってこの国のイメージは、「親日の国」「躍進する新興工業大国」「国王の影響力が非常に強い国」だと思います。確かに現国王の影響力と人徳は、国内外の多くの人が認める程のものです。しかし、人はいずれ老いて死にます。今回は、一見準順調な発展を続けるASEANの中核国タイのアキレス腱、「王位継承問題」について、真面目に考えてみましょう。

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2013年2月11日(月) by Dataと小勝負(AOIAコラムニスト)

いずれ来るタイ国王崩御の「Xデー後」の混沌 周辺諸国にも影響大か?

・・・・・意外と状況は深刻なようで、現在人気のタイの株式に投資する投信をどのように評価すべきかにも、中長期的には結構関係がありそうな課題です。特定の国の金融資産だけに投資する投信は、その国の総合評価も絡むため、評価に手間取る時があります。

昨年十二月五日に、タイのプミポン国王(ラーマ九世)は八十五歳の誕生日を迎えました。国王は集まった二十万人を超える国民を前に「互いを思いやる気持ちがあれば、タイはこれからも安定する」と訴えました。国内を二分して、いまだに火がくすぶり続けるタクシン派と反タクシン派の政治対立を念頭に置いた発言だと、解釈されています。

国王が国民の前に姿を見せたのは、二〇〇六年の即位六十周年記念式典以来何と六年ぶりの事です。〇九年に入院して以降、一昨年には危機説もあっただけに、一見回復したかに思えますが、想像以上にその姿は衰えていました・・・。
「健在であることをアピールしなくてはならなかったのだろう」
タイ現地紙のベテラン政治記者は、こう声を潜めていました。水面下で続く政治対立に危機感を覚える王室とその周辺が、引きずり出したとの見方が有力です。王室周辺の努力はむしろ危機説を助長するだけで、政財界では『Xデー』は遠くないとの見方が広がっています。

王位継承手続きは謎だらけです

困ったことにタイは、こうした話は大っぴらにはできないお国柄です。王室に対する「不敬罪」がいまだに存在するタイでは、国王の健康問題は最大のタブーです。

閉ざされた国立シリラート病院の病室で何が本当は起こっているかは外部に漏れませんが、王室が国王に無理をさせるほど不安が高まっています。
東南アジア諸国連合(ASEAN)地域を代表する国として成長を続けるタイでは、経済の安定成長を保証するための体制安定は、最大の課題です。王位継承を巡って混乱に陥れば、その衝撃は一昨年のドンムアン空港占拠事件や、水害の比ではないとの見方さえあります。

「タイ王室が愛されているのではなく、プミポン国王の個人的資質により敬愛を受けてきただけ」との見方をする人さえ、少なくはありません。実は、タイの王政は、それほど強固なものではないのです。

王位継承の手続きも、明確ではありません。前回、ラーマ八世の死去に伴う継承が行われたのは、何と六十六年前も前の話です。当然ながら当時のことを記憶している人さえ、少なくなっています。継承手続きを議論することさえできず、世界報道自由度ランキングで百三十位台に低迷するタイのメディアで、この話題は取り上げられることさえありません。

そもそも、プミポン国王の即位の経緯さえもが、「闇」に包まれています。ラーマ七世が退位した一九三五年に、プミポン国王の兄アーナンダ国王(ラーマ八世)がスイスで即位。第二次世界大戦終結後に同国王が帰国しましたが、何と半年後に王宮内で額(ひたい)を撃ち抜かれて死亡しました。事件の詳細は明らかにされず、結果として祭り上げられたのが、現在のプミポン国王だったのです。

現国王の人格や、過去国民に向けられた慈愛を疑う者はまれです。しかし、繰り返しクーデターを起こす軍部や、既得権益を守ろうとしてきた枢密院を放置してきたのも事実で、この国の発展段階は、いまだに中途半端なままです。

そもそもタイは、近代において欧米諸国の植民地になった事はなく、明治時代以降は日本の発展に比較的似た形で近代化を模索し、ある程度の発展を続けて来ました。本来ならそろそろ一人当たりの経済力で先進国の仲間入りをしてもそれほど不自然ではないはずですが、実際は英国の植民地だったマレーシアにさえ一人当たりの経済力で抜かれ、今や中国といい勝負です・・・・。
タイ王室の影の部分ばかりが取り上げられるのはワチラロンコン皇太子です。近年は国王の側(そば)でかいがいしく寄り添う姿が報じられる皇太子は、過去の放蕩(ほうとう)のせいで、国民からの支持が低いことで有名です。

現憲法は王位継承の概要に触れてはいます。第二十三条によれば、後継者が指名されていれば国会で承認する手続きがとられます。指名がない場合は、枢密院が推薦(すいせん)する事になっています。この「指名」手続き自体が謎だらけで、さらに、王子だけではなく王女を指名することも出来るため、将来の王位承継プロセスをより複雑にするのではと、既に指摘されています。

主導権争いは避けられない?
実は、プミポン国王は一九七八年に、ワチラロンコン皇太子だけでなく、次女のシリントーン王女にも王位継承権を与えています。同王女は国王の信任も厚く、各国との王室外交へも名代(代理)として派遣されて来たほどです。国内での人気は皇太子より圧倒的に高く、「シリントーン待望論」は皇太子に男児が生まれた〇五年以降も、根強く残っているのです。

「順当に皇太子が即位すれば、枢密院を中心とした既得権益者の反発が出る」と現地紙の記者は語ります。皇太子はかねてタクシン元首相からカネを受け取っているとの噂が絶えません。即位後に自由にコントロールするために、タクシン氏が接近していたとされています。だからこそ、〇六年のクーデターが発生し、同氏は追放されました。いうまでもなく、現在のインラック首相はタクシン氏の妹です。枢密院や軍には焦りが広がっています。

仮にシリントーン王女が即位した場合には、タクシン周辺が再び騒ぎ始めるとも予想され、どちらにせよ混乱が起こる可能性は、高そうです。

問題はこの過程で動き出すと見られる軍です。過去のクーデターが常に平和裏に行われたのは、プミポン現国王という重しが機能していたからに、他なりません。彼がいなくなって、本当に平和裏にクーデターが出来るのか? 一見平和的なデモ隊でも暴徒化する事もある意外と熱しやすい国民性だけに、やや疑問です。

王政を廃止してきた周辺国もタイ王室継承の行方を見定められず、カンボジアがタクシン氏にパイプを持つくらいです。困ったことに多くの企業が進出している本もまた、「皇太子はもちろん、枢密院やタクシン氏にさえ明確な外交チャンネルを持ちません」(外務省関係者)。

タイは、ASEAN諸国の製造業の中心地です。「Xデー後」に訪れる混乱は、国内だけでなく周辺国の経済にも強い影響を与えそうです。プミポン国王がタクシン派を巡る対立を収められず、自身の後継問題を決着できない中で、今も確実に「その日」が近づいています。

・・・既にタイ経済はややバブル化しているとの見方も有力で、数年後には本格的な調整が始まるかも知れません。相対的安定感は、いずれフィリピンの方が上になる可能性もありそうです。

今回は、以上になります。

【※】当ブログ記事は、AOIA 株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料は、あくまでもAOIA株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。当資料中に記載している内容、数値、図表、意見等は資料作成時点のものであり、今後予告なく変更することがあります。当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。当資料をもとにお客様が金融商品取引行為を行われた場合、金利、通貨の価値、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として生じる利益あるいは損失は、すべてお客様に帰属します。


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