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2013年1月23日(水) 巨大国営企業群が主導する中国の正体(上)

  • 投稿日:2013年1月23日

こんにちは、Dataと小勝負です。今回は、私が好きな中国ネタの最新情報を、披露します。

中国に関する報道は腐るほどありますが、巨大国営企業群からみると、意外な姿に驚きます。

「読めば資産形成の力になる 個人投資家の世界の経済・金融研究日記」

2013年1月23日(水) by Dataと小勝負(AOIAコラムニスト)

ゆがんだ「中国式国家資本主義」の母体の、巨大国営企業群

昨年末に北京と広州を結ぶ高速鉄道(中国版新幹線)が、日独の特許流用疑惑を残しながらも全線開通した。全長二千二百九十八キロを時速三百キロで八時間で結ぶ「世界最長の高速鉄道」だと、中国鉄道部は自慢している。一見華々しい巨大プロジェクトの完成だが、実際は内陸部を延々と走る路線で、しかも北京と香港の九龍を結ぶ在来線の「京九線」が並行しており、誰がみても採算性は薄いのだ。京九線は一九九六年に完成以来まだ十六年しか経っておらず、典型的な重複投資だ・・・・。ここにも、過剰投資という近年の中国のお家芸は、存分に発揮されている。

にもかかわらず急ぎ完成させた背景には、中国全土の鉄道の建設、運営を一手に担う鉄道部(鉄道省)の強い意向があったと、いわれている。鉄道部は官庁であり、政策の立案や規制などを担うが、同時に鉄道事業の現業も抱える奇妙な組織だ。例えて言えば、国土交通省がJR全社と日本中の私鉄を抱え込み、自ら監督、規制しながら鉄道を日々、運行しているようなものだ。

鉄道部は二〇一一年七月に浙江省温州で起こした高速鉄道事故で、「人命軽視・安全無視」などの激烈な批判を、国内外から浴びた。進めていた高速鉄道の建設計画は一時すべて停止されただけでなく、信用不安から建設資金の調達もできなくなり、追いつめられた。国民の批判を受けた中国指導部は鉄道部を解体し、政策・規制部門と現業部門に分離分割する改革を模索したが、鉄道部の激しい抵抗に遭い、手をつけられないまま今日に至っている。

共産党すら手を焼くいびつな発展

こうした鉄道部のパワーを客観的に示すのが、米経済誌フォーチュンの「世界五百社(売上高)」ランキングだ。中国鉄道部の傘下で建設工事を引き受ける中国鉄道建設は売上高七百十四億ドル(約六兆円)で世界百十一位、鉄道運営会社の中国鉄道グループは七百十二億ドルで百十二位、さらに鉄道建設の資材会社である中国鉄道資材も三百十九億ドル(二兆六千八百億円)の売り上げがあり、三百四十九位に入っている。世界の巨大企業の中に鉄道部直系の企業が三社もランクインしているのだ。

中国の一部の国有企業・組織は中国経済の成長とともに肥大化し、中国経済を牛耳るとともに共産党体制を陰で動かす存在になりつつある(確か「ロイター焦点」でもそれを指摘する記事がありました)。中国が成長のために推進してきた国家資本主義は、共産党すら手を焼くほどの、いびつな急発展を遂げたのだ。

多くの読者は、一党支配体制の中国で共産党も手を出せない組織や企業があることに、納得できないだろう。「官庁や国有企業の人事権は共産党組織部がしっかり握っているはずで、党や政府に服従しないトップがいれば、首をすげ替えればいいだけだ」と考えるからだ。だが、中国は多様な権力組織の集合体であり、共産党といえども様々な妥協を重ねながら政権を運営していかざるを得ない。

例えば、かつて広東省は独立王国と呼ばれ、省政府はトップから主要幹部まで広東省出身者が占めていた。ようやく中央からトップに人を送り込めるようになったのは九〇年代後半からだ。人民解放軍も党の軍隊とはいえ、シビリアン(軍人でない文民)である共産党トップのコントロールの及ばない部分もある。

独占高収益体制が近代化を阻む

この数年、権力組織として注目されているのは石油産業である。中核は中国石油天然ガス集団公司(CNPC=海外ではペトロチャイナ)、中国石油化工集団公司(Sinopec)の二社で、フォーチュン五百社ではSinopecが中国企業のトップ、全体では第五位に入っており、売上高は三千七百五十二億ドル(約三十一兆五千二百億円)に上る。続く第六位がCNPCで売上高は三千五百二十三億ドル(約二十九兆六千億円)。ロイヤル・ダッチ・シェル、エクソンモービルの欧米二強とも肩を並べようかという巨大企業だ。

石油産業は安全保障上の重要性もあって、歴代、多くの人材を党中央や政府に送り込んできた。十一月の党大会で交代したが、「チャイナナイン」と呼ばれた前の共産党政治局常務委員のひとり、周永康はCNPCの総経理を務めた後、国土資源相や四川省のトップを歴任、常務委員に上り詰めた。

温家宝首相、呉儀前副首相も地質系の学校を卒業し、石油畑で長く働いた経験を持つ。

そうした石油人脈がCNPC、Sinopecの活動を保護し、利権の伸長につながる一方、石油産業の資金力が石油人脈の権力を支えてきた。中国ではガソリンやディーゼル油の小売価格は国際市況をみながら政府が決め、統制しているが、それは常に両社が十分な利益を得られる水準に設定されている。一一年のCNPCとSinopec二社の最終利益の合計額は、中国の民営企業上位五百社の利益総額を上回っているほどだ(!)。儲けすぎという批判はマイカー族やタクシー運転手などからあがってはいるが、石油二社を封じ込める政治勢力は共産党内にもない。

同じエネルギー分野の電力。配電を担う国家電網(ステートグリッド)はフォーチュン五百社で、石油二社に次ぐ、七位にランクインする世界最大の電力会社であり、巨額利益をあげている。その一方で、国家電網に電力を卸売りしている独立系発電事業者はこの数年、赤字続きだ。

国家電網が電力の買い取り価格を低く抑える一方、燃料の石炭価格は国際価格に連動し、高値になっているからだ。山西省など石炭産地にある火力の発電事業者の間では、不満が相当溜まっているが、国家電網の独占高収益体制を、政府は放置したままだ。

このような国家を牛耳る巨大国有企業は、もちろん鉄道やエネルギー分野だけではない。フォーチュン五百社の一二年版には七十三社(香港企業も含む)もの中国企業がランクインしており、上位には中国工商銀行(五十四位)、中国建設銀行(七十七位)、中国移動通信(八十一位)、中国農業銀行(八十四位)、中国国家建設エンジニアリング(百位)など金融、通信、建設、保険、鉄鋼、自動車関連が並ぶ。ほとんどは国有企業であり、国内市場を独占し、とんでもない高収益をあげている企業群だ。

大半は海外市場での売り上げはなく、国内市場のみで肥大化した「内需系企業」である点は注意を要する。中国経済に巣食う非効率で非合理的な存在であり、中国経済の市場経済への移行、近代化を阻んでいるといってもよい代物だが、実は中国では「恵まれた高給取りの勤務先」だ。

こうした国有企業の危険性を深く認識していた指導者がいた。九八年から〇三年まで江沢民国家主席とタッグを組み、経済発展の基盤を築いた朱鎔基前首相だ。朱前首相は社会主義経済の象徴だった巨大な権力組織の国家計画委員会を廃止し、代わりに国家発展改革委員会を設置、国有企業改革を最大の政策として取り組んだ。

余剰人員を抱え競争力のなかった国有企業のリストラを断行するとともに、三重、四重の裏帳簿で資金を不正に隠していた経営のごまかしを暴くため、中央から監察官を派遣して徹底的に帳簿を調べ上げ、余剰金を政府に吸い上げた。一方で、国有企業が抱え込んでいた年金、医療などの機能を地方政府に移管し、国有企業に法人税を課すとともに、「鉄の飯碗」といわれた従業員丸抱えの国有企業体質に終止符を打った。

中国では以前から、「上(政府)に政策あれば、下(臣民など)に対策あり」と言われて来ましたが、この時ばかりはやや例外的に、「政策が対策を圧倒し割とうまく管理できた応急措置の期間」とみて、良いでしょう。中国政府の政策も、時にはそれなりに合理的で有効です。

中央政府の官庁が直下に置き、ポスト(勤務先)確保や資金源としてきた中央直属の国有企業は百数十社にまで絞り込まれ、多数の国有企業が地方政府の監督下に移管され、中央、地方とも政府による管理をきめ細かく実施する体制を築いた。そうした改革によって国有企業の競争力は高まり、それが今世紀に入ってからの中国経済の高成長につながった。

同時に江―朱体制が進めたのは民間企業の活性化だ。すでに中国経済の大きな主体となっていた民間資本をさらに強くすることで、市場競争が活発化し、経済の効率化、グローバル市場で競争できる企業が生まれるとの発想があった。

その流れで、江総書記が行った政治改革が〇一年の「私営企業家の共産党入党容認」だった。プロレタリアートの政党である共産党に中小とはいえ、資本家を取り込むことは、党そのものが時代に対応して変化したことを示すものだった。中国の民間企業が続々成長し、上海、深センの株式市場にも上場するようになった。

今回は、以上になります。

次回はさらに深掘りし、繁栄を極める中国国営企業が生み出した光と影、そして世界中の企業が消費力を期待する「中国中産階級の正体」について、考えてみます。

【※】当ブログ記事は、AOIA 株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料は、あくまでもAOIA株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。当資料中に記載している内容、数値、図表、意見等は資料作成時点のものであり、今後予告なく変更することがあります。当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。当資料をもとにお客様が金融商品取引行為を行われた場合、金利、通貨の価値、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として生じる利益あるいは損失は、すべてお客様に帰属します。


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