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2012年9月26日(水)QE3(量的緩和第3弾)発動で、果たして米国経済は加速するのか?(下)

  • 投稿日:2012年9月26日
「読めば資産形成の力になる 個人投資家の世界の経済・金融研究日記」
2012年9月26日(水)by Dataと小勝負(AOIAアナリスト)

こんにちは、Dataと小勝負です。米国経済の今後を考える際に特に重要なのは、引き続き雇用と住宅になりそうです。金融はやはり脇役で、それ以外の経済実態を見ないと全体像は分からず、経済実態こそが長期的な株価などの投資環境を大きく左右します。
投資の勉強を本格的にすると、嫌でも世界の政治や経済、産業にも詳しくなれます。

アメリカでは、何年間も伸びてない賃金所得が、課題です。
企業利益と違って、賃金所得は経済危機でも大きな落ち込みは示しませんでした。しかし、危機後の回復もきわめて緩やかで、ほとんど改善していません。
2012年の水準は、経済危機前のピーク(08年第1四半期)に比べて4.3%の伸びに留まっています(民間企業では3.8%)。これは、名目GDPの増加率の半分程度に過ぎません。

製造業は11年にかなり大きく落ち込み、その後回復しましたが、12年第2四半期でも、経済危機前のピーク(07年頃)に比べて4%程度低い水準にしか、回復していません。最近の中国経済の減速もあり、輸出増加による製造業の雇用大幅増も、結局は未達成に終わりそうです。
このように、経済危機後のアメリカでは、賃金所得の伸びが、企業所得の伸びに対して大幅に立ち遅れているのです。
雇用で見ると事態はさらに深刻です。アメリカの雇用は経済危機で約880万人減少しましたが、その後410万人しか回復していません。失業率も8%台に高止まりしたままです。

つまり、アメリカが抱えているのは、「企業利益が伸びて、賃金所得が伸び悩む(あるいは低下する)」という構造的な問題、分配の問題です。ひところ富の象徴であるウォール街でのデモ行動の「ウォール街を占拠せよ」運動が活発化した背景には、米国の企業と個人、
高所得の個人とそうではない大多数の個人の間の、格差があります。
これが構造的な問題である事は、アップル社の現状を見れば、よく分かります。
アップルの製品は、台湾のEMS(Electronics Manufacturing Service 電子機器の受託生産)企業ホンハイの子会社フォックスコンなど、世界中の企業で水平分業によって生産されています。新興国の安い労働力を使って低い原価で製造し、高く売って利益を得るのです。
しかし、こうした活動のほとんどがアメリカ国外で行なわれているため、アメリカ国内の雇用は、外国ほどには増えません。
アメリカ国内で伸びるのは、金融に代表されるように、高度の専門家のサービスです。だから、少数の人が高い所得を得るようになり、その結果、現在も所得格差が発生し、拡大を続けているのです。

米国に必要なのは結局、医療や職業訓練等の社会保障制度の強化と増税では?
以上の現象をマクロ経済的に見ると、概ね以下の結果になります。
1990年代以降の世界において、新興国の工業化により先進国の製造業が縮小し、それによって賃金も低迷しました。アメリカもその問題に直面している訳です。
「貿易を通じて、新興国の低賃金の影響が先進国に及び、その結果、先進国の賃金が伸び悩む(あるいは下落する)」というのが、「要素価格均等化定理」が予測する結果です。このような変化は、90年代以降の世界において、徐々に、しかし確実に生じつつあります。 こうした構造的変化に対して、金融政策だけで対処するのは誤りです。自国の製品の国際競争力が向上する訳でも、借金が棒引きになる訳でもないからです。

この問題に対処する有効な方法は、デンマークで見られるように、公的で低負担な職業訓練を中心とした社会保障制度を拡充する事です。アメリカの場合は、それ以前の医療保険が不十分なので、この整備も重要な課題です。また、失業保険も重要です。さらに、富裕層への課税強化も含めた税金による富の再分配の促進も、望まれます。
現在のアメリカで求められる政策とはこの様なものですが、共和党は絵に描いたような「小さな政府・自由競争・金持ち優遇」政策です。これだけ見ても、年内に行われる米国の大統領選挙と議会選挙の重要性は、明らかです。

貧富の格差が更に深刻化すると、米国経済の実に70%を占める個人消費も冷え込み、結局経済も金融も投資も、悪影響を受けてしまいます。
当面QE3(量的緩和第3弾)が米景気に好影響を与え得る効果は、FRBが住宅ローン担保証券(MBS)を大量に購入し、住宅ローン金利の低下を促し、長期間の低迷から回復しつつある住宅市場のてこ入れが出来た場合の話です。これに対する期待感は、既に相当レベルに達しています。

他方で、金融緩和の影響は、国際的な資金移動を通じて全世界に波及します。影響は既に、為替レートに現われています。さらに、「安全資産」を求める外国の資金が日本に流れ込んだ結果、金利低下と価格上昇が進み過ぎた国債バブルも発生しました。しかし、これで全てではありません。将来どのような影響があるか、予測しがたい面もあるのです。
今回は、以上になります。

次回から、新テーマとなります。
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