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英国の経済・社会の基本構造と課題について 下 最近の英国・欧州の経済情勢と英ポンド・英国債の今後のリスクについて その4

  • 投稿日:2012年8月27日

「読めば明日の力になる 個人投資家の世界の経済・金融研究日記」

最近の英国・欧州の経済情勢と英ポンド・英国債の今後のリスクについて

その4 英国の経済・社会の基本構造と課題について 下

2012827日(月)by Dataと小勝負(AOIAアナリスト)

英国を理解するキーワードは、良くも悪くもいまだに「階級社会」です。

この言葉の意味が分かれば、現在の財政再建と景気悪化の影響も、見えて来ます。

財政再建路線については、大陸欧州で見直し機運が広がっていますが、英国では今でも手綱を緩めていません。現政権は特殊法人の人員削減や公務員の採用凍結、授業料引き上げによる教育予算の削減などで、4年間で810億ポンド(約10兆円)の大規模な歳出削減を推進しようとしています。

ただ、この政策には深刻な副作用があります。もともと英国は階級格差による貧富の格差が凄く、ロンドン市内でさえ、地域によって平均寿命が最大で10歳強も違います。そうしたお国柄で政府支出を削減し自己負担を増やせば、どの家庭に偶然生まれるかで人生の半分近くが決まってしまう、悪い意味での弱肉強食のかつての資本主義社会に戻ってしまうリスクは、決して小さくはありません。

変わる欧州の中で、問われる英国の立場

英国の欧州外交を突き詰めれば、「主権の移譲を回避する一方で、貿易は拡大を目指す」事の、繰り返しでした。しかし、欧州統合が深まる中、いつまでもこの戦略が通用するとは限りません。

銀行同盟等の欧州危機の打開策として打ち出された枠組みは、英国が反対しても続々と構築されて行き、日に日に英国は独自性を失っています。

※銀行同盟とは、ユーロ圏全体での銀行預金保険や銀行の監督、経営難の銀行の資本増強や破綻処理に関する共同対策の事などです。ユーロ危機対策として重要視する人も多く、国際経済や海外投資などにご関心のある方には、今や必要な知識のひとつです。

結果的に現在進行中なのは、欧州の政策決定に対する英国の影響力の低下です。

大切にしている独自の金融・財政政策も、実はそれほど成功していません。

せっかくのオリンピック直前の201246月期の国内総生産(GDP)は、前期比で0.7%の減少に終わりました。しかも、3四半期連続でマイナス成長が続いているのです・・・。

英国の中央銀行にあたるイングランド銀行の、特定の物価目標が目標から外れたら直ちに政策対応する「インフレターゲット政策」も過去数年間目標値を守れず、最近の英国債の金利はインフレ率に負ける実質マイナス金利で終わっています。これこそが危険な「英国債のバブル」の正体です。簡単に言うと国債価格が上がり過ぎ、後は下がるだけなのです。そうした状況に追い打ちをかけるように勃発したのが、金融業界の諸問題です。

英国の実質経済成長率 出所:世界経済のネタ帳 年率%の経済成長は、結構大変です・・・。

出典: IMF – World Economic Outlook Databases(20124月版)


企業のグローバル展開に伴い、海外との誘致競争も激しくなっていて、法人実効税率の引き下げは世界的な傾向です。景気対策もあり、英国は4月に26%から24%に下げました。

アジアでは中国が25%、シンガポールが17%。日本は4月に5%引き下げて35%(地方税含む)にしましたが、震災後の臨時増税で3年間は38%にとどまる見通しです。

それでも英有力シンクタンクの国立経済社会研究所(NIESR)によると、2012年の英国経済がマイナス成長になる見通しです。ユーロ圏債務危機や英国の緊縮財政などが、原因です。2014年までは景気の本格回復は見込めない」としています。

「財政赤字の削減が3年間先送りされていれば、2011年─2021年の国内総生産(GDP)が、総額2,390億ポンドも上乗せされていた可能性がある」としています。

経済成長率の予想は2012年がマイナス0.5%、2013年がプラス1.3%。

今回の報告書を受け、財政健全化のスピードをめぐる議論が、一段と熱を帯びそうです。

2012年8月14日のブルームバーグニュースには、英国経済の異変の前兆を示唆する、気になる報道がありました。英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)が集計した英住宅市場に関する調査結果によると、7月の住宅価格指標は1年ぶりの低水準となったのです。取引が4カ月連続で減少した事が、響いています。

RICSが14日配布した資料によれば、不動産業者や鑑定士を対象に実施した月間調査で、住宅価格指標はマイナス24と、6月のマイナス22から低下しました。同指標はゼロを下回ると、住宅価格が下落したとの回答が上昇したとの回答より多かった事を示しています。

RICSは発表資料で「今後3カ月の見通しはほとんど変わっていない」ものの、「より長期的な向こう1年の見通しは、著しく悪化している」と指摘しています。

・・・・過去3カ月間にわたり、RICSが調査対象とする地域のうち、ロンドンを除く全ての地域で住宅価格指標は低下しています。気になる動きです。

今回は、以上になります。

次回はいよいよ、英国金融界の現在の課題についてご一緒に考えてみましょう

次回作は、明日(828日)に投稿の予定です。


【※】当ブログ記事は、AOIA 株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料は、飽く迄もAOIA株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。当資料中に記載している内容、数値、図表、意見等は資料作成時点のものであり、今後予告なく変更することがあります。当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。当資料をもとにお客様が金融商品取引行為を行われた場合、金利、通貨の価値、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として生じる利益あるいは損失は、すべてお客様に帰属します。


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