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英国の経済・社会の基本構造と課題について 上 最近の英国・欧州の経済情勢と英ポンド・英国債の今後のリスクについて その3

  • 投稿日:2012年8月25日

「読めば明日の力になる 個人投資家の世界の経済・金融研究日記」

最近の英国・欧州の経済情勢と英ポンド・英国債の今後のリスクについて

その3 英国の経済・社会の基本構造と課題について 上

2012825日(土)by Dataと小勝負(AOIAアナリスト)

お待たせしました。本日からいよいよ英国を中心に話を進めて行きます。

なぜ先に、通貨が違う南欧諸国を中心とする大陸欧州を取り上げたのかといいますと、英国とのつながりが相当強く、英国だけ考えても限界があるからです。

またこの方法なら、ユーロとポンドをまとめて考えられ、今後のあなたの「資産運用」や「資産形成」、「海外投資」の、有力な参考資料に充分なると判断したからでもあります。

それでは、知っているようで意外と知らない英国の内部事情について、ご一緒に考えてみましょう。

「大欧州」にアレルギーが強かったのは、サッチャー元首相です。かつて基軸通貨だったポンドを捨て、財政・金融政策の決定権をブリュッセルのEC官僚に譲る事は、「国家主権の独立性へのゆゆしき挑戦」と考えていました。

英国にしてみれば、最近のユーロ危機は「ほら見た事か」の状況です。フィナンシャル・タイムズ(FT)紙の20125月の世論調査によると、欧州連合(EU)離脱「賛成」の回答は46%と、「残留」回答の30%を上回っています。

英国が激しい交渉の末、共通通貨の導入を法的に規定したマーストリヒト条約で「オプトアウト」と呼ばれる例外規定を勝ち取ったのは、1990年代初めの事です。EUに居ながらにして「ユーロ」を使わない権利が認められたのです。この特別扱いを受けているのは英国とデンマークのみで、これが現在のポンド高の一因です。

通貨ユーロ以外でも、国境でのパスポート検査を撤廃するジュンゲン協定や域内の労働時間指令など、多くの分野で英国はオプトアウトを駆使しています。英国は基本的に、自国の主張が認められる範囲内では欧州統合に参加しますが、それ以上の責任や負担は受け入れないのです。気分は今でも、「名誉ある孤立」なのかもしれません。

「我々は毎日5,300万ポンド(約64億円)をブリュッセルに仕送りするキャッシュマシンだ。」ただでさえ欧州連合(EU)という組織を支える為に巨額の税金が使われている事への国民の反発は強く、他国を救うための資金支援となれば、なおさらです。

だから、危機対応として設立された欧州金融安定基金(EFSF)に、英国は資金拠出していないのです・・・!

日経ビジネス2012820日号の20ページには、興味深い記述があります。

2012年初めの主要国・地域のミザリーインデックス《悲惨指数=(物価上昇率+失業率)》

米国 2011年末のおよそ13%弱から急低下し、約10%まで下落

英国 2011年末の約14%から急低下し、およそ12

ユーロ圏 2009年頃の10%前後から急上昇し、14%弱

・・・これだけ見ると、英国は大陸欧州よりはましですが、実はそうとも言い切れません。

出所:日経ヴェリタス201285日号 61ページ左上の表

情報源はIMFの2011年のデータ

英国                                ユーロ圏17か国
6,200万人             人口            3億2,600万人
2,418           名目国内総生産(GDP)       13,115
単位:10億ドル
82%             政府債務残高GDP比         88%
▲(マイナス)1.9%    経常収支対GDP比 0.3%(何とか黒字)
これが弱点 金融も弱体化
8%                 失業率                10%

日経ヴェリタス201285日号の61ページ右上には、実に興味深いグラフがあります。

英国の国内総生産(GDP)を産業別構成比でみると、驚くほど金融・不動産業への依存度が高いのです。2010年のデータによると、英国GDPのうち「金融業・不動産業」は32.9%に達し、次いで「公共サービス業・家事」など23.9%、「卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業、運輸業」が21.6%、「建設業を除く工業」は15.0%に過ぎません。

英国のロンドンの国際金融センターとしての存在感は、圧倒的です。外国為替の取引額で世界の4割弱、クロスボーダー(国際的)銀行貸し出しでは約2割と、世界一のシェアを握っています。その結果、ロンドンの一部の富裕層に富が集中し過ぎているという問題も、定着しました。これが、英国で不動産業が肥大化した一因でもあります。

製造業もサッチャー政権以降、必死に外国メーカーの誘致を進めて来たはずですが、実力はそれほどでもなく、現在の経常赤字の原因となっています。

2010年の英国の輸出の実に47.3%がユーロ圏向けで、比較的経済が堅調な北米(NAFTA加盟国)は15.2%に過ぎません。さらに伸び盛りのアジア大洋州は11.8%に過ぎず、良くも悪くも貿易はユーロ圏頼みなのが、現状です。

しかし現在のユーロ危機の影響で、抜群の競争力が売りのドイツでさえ、以前よりは輸出に苦労しています。より競争力に欠ける英国輸出産業の前途は、楽観できません。

しかも、肝心の金融業にさえ、影が差しつつあるのです。

今回は、以上になります。

次回は、厳しさを増しつつある英国の経済・社会について、更に深くご紹介します。

次回作は、来週月曜日(827日)に投稿予定です。

【※】当ブログ記事は、AOIA 株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料は、飽く迄もAOIA株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。当資料中に記載している内容、数値、図表、意見等は資料作成時点のものであり、今後予告なく変更することがあります。当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。当資料をもとにお客様が金融商品取引行為を行われた場合、金利、通貨の価値、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として生じる利益あるいは損失は、すべてお客様に帰属します。


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