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2012年10月19日(金) 意外と苦戦中の巨大SWF(政府系ファンド)、その理由とは?

  • 投稿日:2012年10月19日
「読めば資産形成の力になる 個人投資家の世界の経済・金融研究日記」
2012年10月19日(金) by Dataと小勝負(AOIAアナリスト)
こんにちは、好奇心は人一倍の、Dataと小勝負です。私の仕事は勉強と仕事の連続で、好奇心がない事には始まりませんが、幸いそれは有り余っているので、今日もマイペースで仕事が続いています。

今回は、一見謎に包まれた無敵の存在の巨大SWF(政府系ファンド)について考えます。中国系と思しき「OD05オムニバス」が日本の主要企業の株式を大量に購入したり、ノルウェーやUAE(アラブ首長国連邦)などの巨大SWFの資金量が軽く数千億ドルを超えて更に膨張を続けるなど、一見快進撃が続いています。
ただ、本当に運用が順調に続いているのかといえば、実はそうでもない様です。
その背景には、投資の世界ではごく当たり前のある「法則」が働いていて、なかなか示唆に富みます。
SWFと呼ばれる政府系ファンドが市場で存在感を増してきて、特に目立つのが産油国ノルウェーの政府年金基金『ノルウェー中銀インベストメント・マネジメント(NBIM)』です。世界の株式の1%(約48兆円!)を保有するともいわれ、その一挙一動に世界中の投資家が注目しています。
資産の約6割を株式で運用し、同基金の市場価格は、世界の市場の動きそのものです。
北海油田 の収入で得たマネーを運用する同基金は、世界最大規模のソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)です。情報開示、資産拡大、収益追求志向が徹底しています。
その背景には、国民の年金資産を運用する投資家の責任に加えて、近年の運用環境の悪化もあるようです。世界的な株安で08年の運用利回り は実に23.3%ものマイナス。11年も2.5%のマイナスと、運用は厳しさを増しています。

同基金が存在感を存分に発揮したのが、ギリシャ危機の時です。保有するギリシャ国債 が債務カットの対象になると削減に応じず、強制カットの対象になってしまいました。激怒した同基金は保有するPIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)の国債を半分以上も減らしました。その影響もあり、イタリアとスペインなどの国債の金利は高騰し、ユーロ危機が再発しました。国内ではあまり報道されていない、ユーロ危機の「裏事情」です。
・・・・自らの巨大さゆえに逃げ遅れて、大損をしてしまったようです。弱い存在です。

日本株も2011年末時点で1,267銘柄も保有しています。総投資額は1,096億クローネ(約1兆4,000億円)。日本国債の保有も1兆円強と、米国債に次いで多い保有額です。
SWF(政府系ファンド)の合計資産は5兆ドルと日本GDPに迫る勢いですが・・・・
世界では約60のソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)が存在するとされ、調査機関のSWFインスティチュートによると、資産規模は2007年の約3.2兆ドルから最近は合計およそ5.13兆億ドル(約400兆円)に達します。リーマン・ショック後に運用の悪化で一時落ち込んだものの、ここにきて再び増加傾向が強まっています。

中東産油国のオイルマネーを元手にしたSWF設立は、50年近い歴史があります。アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ投資庁(ADIA)やサウジアラビア通貨庁(SAMA)などが、特に有名です。これらは将来の原油枯渇に備えて、石油で得た富を次の世代へと継承する基金という性格が強いのが特徴です。

SWFの設立が急速に増え始めたのは、2000年前後からです。01年から10年にかけては、実に30件近くが新設されました。まさに世界的な大ブーム到来といってもよいでしょう。大きな特徴は外貨準備を原資にするSWFが増えている事です。中国投資有限責任公司(CIC)は、設立からわずか5年で何と5,000億ドル近い資産規模に膨らみ、中国の資金力を誇示しています。

尖閣諸島問題などで日中関係がぎくしゃくするなか、その中国のSWFの動きがにわかに注目を集めています。特に企業関係者が神経をとがらせているのが、数年前から日本企業の大株主に登場し始めた「OD05オムニバス」という名義の機関投資家です。中国のSWFとみられ、3月末で約170社以上の株式を保有し、投資総額は3兆円を超えました。

投資先の多さから純投資とみられ、株主権を行使する動きは今のところありませんが、実態が見えにくいだけに「何となく気味が悪い」との声は多く、日中関係悪化を受けた売り浴びせによる株価下落の進行を、懸念する者もいます。それ以前に直近の日本株の停滞もあり、それほど利益は出ていない可能性があります。

SWF(政府系ファンド)の最大の弱点は、「投資で成功するには大き過ぎる」という事です。もともとファンドというものは、適正規模を超えると、本来は所有すべきではない中途半端な業績の企業の株式や、業績好調でも既に割高な株式を買うか、あるいは投資収益をあきらめて現金(キャッシュ)を貯め込み、当面は市場の傍観者になるしかありません。もちろん空売りなどのテクニックもありますが、実は米国のヘッジファンドの多くでさえ、ダウ工業株30種平均よりも運用成績が悪いくらいです。

2008年のリーマン・ショックの様な異変でも起きれば、ノルウェーのSWF(政府系ファンド)の様に、本当に大損をしてしまいます。この弱点は、実は日米などの巨大投資信託にも共通して言える事です。その結果、より小ぶりな新興ファンドが好成績のもとに急成長して注目されたり、下手なファンドよりも好成績な個人投資家が続出しているのです。

SWFの場合は更なる弱点もあります。資産規模が巨大な一方で、自分たちの情報を出し惜しみ、投資家や企業の警戒感を刺激しています。ノルウェー政府年金基金の様に詳細な保有資産を開示する所は、むしろ例外です。

このように見てみると、SWF(政府系ファンド)は決して無敵ではなく、SWFが買ったからといっても、必ずしもその銘柄が優良株とは限らない事が、良く分かります。確かにSWFの巨大な資金力をもってすれば、少なくても一部の銘柄、マーケットの一角を、一時的に買え支えたり株価を上昇させる事は可能かも知れませんが、やはりそれ以上に長期的に影響力があるのは、個別企業の業績や、欧州情勢・中国経済・米大統領・議会選挙などの世界情勢、そして為替相場の様です。

今回は、以上になります。

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