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AIJ投資顧問問題を考える(2)

  • 投稿日:2012年8月10日

AIJ投資顧問問題を考える(2)

現在進行中の各組織の対応策と、望ましい企業年金の制度と運用について

by Dataと小勝負(AOIAアナリスト)

■各組織で現在進行中の対応策

2月24日 金融庁が(企業年金の主な運用者でもある)国内保険会社に対し、年内に経営内容を格付する「評定制度」を導入すると発表。保険販売や資産運用、法令順守など8項目を4段階で評価。好成績の項目は次回検査対象から外すなど、将来の検査頻度や範囲に反映させる。

参考情報 3月15日 2010年の企業年金資産の運用主体別シェア

信託銀行48.9
%(約5割)、投資顧問29.9%(約3割)、生命保険会社20.7%(約2割)。

2月28日 AIJ問題を受け、金融庁は多くの企業年金を「プロ投資家」として扱う現在の仕組みの見直しの検討に入る。資産規模が小さく運用体制が不充分な場合は、一般投資家(アマ)と見なし、金融商品を提案する際に丁寧な説明を金融機関に求める方針だ。

3月1日 AIJ問題を受け、金融庁は企業年金が運用手法や時価情報が不透明な資産に投資している場合、資産を管理する信託銀行が警告する仕組みを導入する方針を発表した。

3月4日 AIJ問題を受け、金融庁は投資顧問会社の情報開示を拡充する方針を固めた。投資顧問会社が提出する事業報告書に、ファンドなどの運用利回りの推移や、外部監査有無の記載を新たに義務付ける。運用商品や証券会社との資本関係も開示させる。不審な運用実態などに外部チェックが働きやすいようにする。金融商品取引法の改正により、出来るだけ早期の実施を目指す。

3月5日 金融庁は投資運用会社が虚偽の運用報告書や事業報告書を提出した場合の、罰則を強める事を検討し始めている。現在は責任者らに最高6か月~1年の懲役を科しているが、これを最高1年~3年程度の引き上げる案が軸となる。金融商品取引法は投資顧問などの運用会社に対し、企業年金等の顧客に6か月~1年毎に運用報告書を渡し、金融庁には事業報告書を毎年提出する事を義務付けている。虚偽の報告書を出した場合の罰則は、虚偽の有価証券(株式や債券)報告書や有価証券届出書を出した場合などに比べて軽い。

3月9日 政府は金融商品取引法改正案を閣議決定した。オリンパスの粉飾決算事件を受け、行政処分である課徴金の対象を、開示書類の虚偽記載に加担した外部協力者にも拡大。調査に非協力的な違反者に出頭命令を出せるなど、不正行為への罰則を強化する。株式や金融先物、商品を一括して取引する「総合取引所」の実現に向けた制度整備などを盛り込んだ。金融庁はAIJ問題を受け、投資顧問への規制強化策などの検討にも着手している。ただ、AIJの運用実態などが依然として解明されていないため、全容が判明した後に改めて金融商品取引法改正案の提出を検討する。

3月14日 日本証券投資顧問業協会会長はAIJ問題の再発防止策として検討されている、投資顧問やファンドへの監査義務付けに関しては、「費用対効果もよく考慮しないといけない」と指摘。運用利回り開示義務化についても、「顧客との守秘義務契約に反する」との消極的な見解を示した。

企業年金連合会理事長は、企業年金の運用能力やリスク管理体制を強化する為、「実務担当者に対する教育・研修を今後拡充、強化していきたい」との意向を示した。
AIJ問題を受け、企業年金からの問い合わせに答える法律相談窓口を開設した事も、明らかにした。

3
月15日 AIJ問題を受けて、投資顧問265社を対象にした金融庁の一斉調査が3月14日に締切り期限を迎えた。同庁によると、期限内に全企業が回答を提出。調査結果は近く公表する。さらに追加調査が必要な投資顧問を絞り込み、第2のAIJ投資顧問が無いかの点検を急ぐ。

金融庁は2
月29日に顧客と投資一任契約を結んでいる投資顧問に対して、書面による一斉検査に着手した。

会社の沿革やグループ会社、主要株主の状況、役員の兼職の有無、財務状況の推移など、会社の実態の報告を求めた。顧客については、年金や個人などの属性、契約金額や運用の概要、運用結果等の詳細な報告を求めた。

早ければ3
月中にも2次調査に入り、運用中の個別銘柄の金額や金融派生商品の取引状況などを、詳細に調べる。その上で問題を起こす恐れがあると判断した投資顧問は、証券取引等監視委員会による特別検査対象にする。

※私が読んだ金融専門家の書いたあるコラムによると、第2
のAIJ投資顧問は実在します。

企業レベルで今後望まれる対応策

財政状況の厳しい年金基金では専門的なコンサルタントを雇うのが難しい場合もあり、制度設計を頼り資産運用を委託している信託銀行や生命保険会社などの「幹事会社」に、実質的なコンサルタントの役割を任せている所が少なくありません。現在の制度では、企業年金基金は届出ない限りは「アマチュア投資家」になります。しかし、現在の運用環境を考えると、銀行などの機関投資家よりも、更に困難な運用を求められています。そのため、運用に精通した担当者を雇うか、第三者のコンサルタントなどと契約する、もしくは有識者らを集めた資産運用委員会を設けて投資内容を諮問するなど、適切な投資を可能にする体制を整えるべきです。もしこれが難しいなら、過大な経営リスクを抱えている可能性もあるので、現在の運用方法は続けない方が良いのかもしれません。日本の財政問題の深刻化もあり、今後は国内の金利・経済・金融が不安定化する可能性も無視できないからです。企業年金の主な存在意義は、終身年金の場合の「長生きのための保険」という機能を除くと、「節税メリットを伴う資産運用による、実質的に有利な報酬の支払い」ですが、確定拠出型年金(401K)でも代用可能です。いずれにせよ、利回りで目標を決めない方が良いでしょう。AIJに引っかかった年金基金の多くが、高めの運用利回りを目標にして、無理にリスクを取っていました。運用目標はリスクから先に決めるべきです。

年金見直しの基本的な手順は、以下のようになるかと思います。

1、まずは、冷静に状況を把握する。
多くの年金基金が、そもそも運用状況が正確に把握できていません。信託銀行、生命保険会社、投資顧問会社を使って、合計で数十もの金融商品に投資していて、基金側で運用の全体像が把握できなくなっている事が少なくありません。年金運用全体として、「どの規模のリスクを取っていて」、「その内容がどの様なもので」、「どの位の確率で最大でいくらまで損をする可能性があるのかを母体企業の経営者(達)に正確な金額で伝える事」は、年金運用担当者の最重要任務の1つですが、これが満足に出来ていない基金が少なくはありません。

そもそも年金運用の成否で会社の損益がぶれる様では、リスクが大き過ぎるので望ましい状況ではありません。

2、コンサル会社などのアドバイスで良いものがあれば、前向きに検討する。
今回AIJを利用していた基金の多くが、日本を代表する年金コンサルティング会社をアドバイザーにしていました。アドバイザー達は、基金が「AIJの商品を買いたい」と言う事に反対して解約されるのを恐れて、結局は止められなかったのです。これでは本末転倒と言ってもよい状況です。

投資顧問・運用会社は、規模や所属グループよりも、実力で選ぶべきではないでしょうか・・・?

投資家に対する忠実義務の遂行という本質論から言えば、大手金融機関や、その系列の投資顧問会社や運用会社よりも、独立系の方が本来は選好されてもいいのです。

なぜなら、独立系の投資顧問会社や運用会社は自由な立場なので、「投資家の利益」と「投資顧問会社・運用会社・運用責任者個人の利益」が一致しやすいのに対し、何らかの親会社を持つ運用会社の場合には、そこに必ず利益相反の要素が入り込むからです。それ以前に、親会社の推薦する金融商品が最高の条件とは限りません。

3、運用担当者のレベルアップと専門職化を進める。
厚生年金基金では運用経験者不在の所が約8割に上るという、危機的な状況です。

2011年3月末時点でAIJに委託していた74の厚生年金保険の内、47厚生年金基金に天下りがあったと厚生労働省は発表しています。厚生労働相は年金基金の役職員は公募するように要請していますが、なかなか上手く行っていません。

日本の財政は、年利1
~2%以内の超低金利でないと持ちません。特に対策を取らない年金基金の運用も、似た様な結果になるでしょう。これでは従業員の老後の生活が守れないかも知れません。投資の世界は、一般の方が思っているよりも、はるかに専門的で広大です。充分な学習なくして満足な結果を得るのは、相当困難です。

受益者の大切な資金を管理する責任者が運用の専門家ではなく、社会保障や厚生労働の専門家(官僚)の天下りの受け皿となっていた常識も正すべきでしょう。社内スタッフも含めてこの仕事に関わる方全員が充分な関心と責任感を持ち、知識向上に努め、結果を出せる者が真の責任者として報われる社内ルールの定着も必要でしょう。

4、年金の予定利率(想定運用利回り)は、現実的な水準に調整する。
3月17日 公的年金に上乗せする私的な企業年金にはいくつか種類があり、大企業は上乗せ部分だけ手がけるタイプが大半です。厚生年金基金は公的年金部分を国から預かり、上乗せ部分と一緒に代行運用する仕組みで、中小企業が中心です。かつては大企業でも厚生年金基金が主流でしたが、運用難で次々と公的年金部分を国に返上し、身軽になりました。個人的には、出来るだけ多くの企業が、保険料(掛金)支払いの連帯責任まで負わされている総合型の厚生年金基金から脱退すべきだと考えていますが、その為には充分な「集中投資」が必要なのが、現状です。今回のAIJ事件の本当の原因は、高度成長期の高い予定利率をそのまま据え置き、掛金を上げなかった企業年金側の不作為だった可能性があります。

企業年金連合会によれば、2010
年度実績でわが国の企業年金の予定利率の分布を見ると、以下の通りです。

2.5
%未満が11.2 2.5%~3.5%が55.5%  3.5%以上が33.3
少し高過ぎると考えているのは、私だけでしょうか・・・?

予定利率が5.5
%の企業年金がまだ500を超えているとさえ言われています。大企業が実施する企業年金は率先して予定利率の引下げを行って来ましたが、中小企業中心の総合型の厚生年金基金等は、加入企業間の掛金の調整が難しく据え置いてきた歴史があります。いつかは好景気が到来し、市中金利もまた高くなるだろうという淡い期待に望みを託して。しかし、過去10年来長期金利が1~2%で推移してきたわが国において、このような高い予定利率を据え置いてきた結果は、掛金率の引上げを先送りする事と、ほぼ同じでした。私はコラム「日本国債を考える①②③」で、日本の財政の危機的な現状と今後の急激な増税の可能性を指摘しましたが、日本の企業年金の現状を見る限り、これは民間版の国債(公的債務)問題と言っても、過言ではありません。掛金が少なすぎるか税収が極端に不足しているかの、お金の「名称」の違いに過ぎません。

その様な状況下では、企業年金の運用責任者がハイリスク・ハイリターン運用に引き寄せられるリスクも充分にあり得ますが、年金の様な老後の生活資金はそうした運用には、そもそも不向きです。今回被害に遭った企業年金の運用責任者はわらにもすがる思いでAIJに飛びついたのではないでしょうか? 残念ながら本来やるべき事は、これとは相当違っていたはずです。

こう考えてみると、社会環境の変化に対応した年金の構造改革の重要性が改めて痛感されます。苦しい作業ですが、運用環境に合わせて予定利率の切下げを断行し、年金給付を見直し、年金掛金の増額などを行っていれば、AIJ事件はあるいは防げたのかも知れません。

※参考情報 2012年2月半ば発行の日経ヴェリタス 確定給付型企業年金の多くは、将来の期待運用利回りの予定利率を2%程度まで下げていて、高配当の日本株の配当リターンだけでも充分賄えるようになって来た。

5、企業経営と年金運用は分離すべしー現状では企業によっては共倒れのリスクさえあります!
日本の会計基準では、年金資産と引当金の合計額が年金債務を下回る純債務状態となると、その差額を数年に分けて費用計上しなければいけません。しかも、取引先や株主、金融機関などの利害関係者は、その時点の年金純債務額で企業の経営状況を評価・判断する傾向が強いのが、現状です。

3月1日(総合型)厚生年金基金が運用失敗などで積立金が不足した場合は、母体企業が穴埋めする必要がある。積立金の穴埋めができない場合、最悪の場合は倒産する。その時は、年金基金を構成する他の企業が倒産企業の負担分を引き継ぐ仕組みになっている。残った企業への負担額は増大する為、場合によっては連鎖倒産のリスクもある。厚生労働省は年金基金の解散は最後の手段としており、年金の掛金の引上げなどで積立金不足を解消して欲しいとの方針。※兵庫県のタクシー会社の総合型年金基金加入企業で、連鎖倒産が現在も進行中です。

・・・・厚生年金基金を含めて確定給付型の年金を持つ事は、ファンドマネージャーなどの専門家のいない運用子会社を持ち、これに資本金の大半(資本金より多い場合もある)を任せている状態と実質的に同じで、ばくちに近い危険な状態です。・・・問題は、加入企業の脱退を認めない厚生年金基金がある事です。厚労省は、フェアな条件で脱退しようとする企業を厚生年金基金が認める様に指導すべきですし、財政状況が厳しい基金に対しては、これまでよりも更に早い段階で解散を促し、そのための便宜を図るべきでしょう。

6、
最終的には、企業単位から個人単位に運用の主役を変更すべし。
多くの事業会社は資産運用会社ではありませんが、年金運用の成否によって会社の損益(あるいは企業価値)が大きくぶれる確定給付型の企業年金を有していて、今や企業経営にとっては非合理的なリスク資産です。年金運営に経営リスクは不要です。最終的には従業員それぞれが運用の主役になれるように、制度の変更を行なうべきでしょう。そうすれば、万一運用で失敗しても、少なくても職場と雇用は守れます。

参考情報 3
月16少人数対象の投資運用会社 金融庁が監督強化 4月から

金融庁は届出だけで営業できる少人数相手の投資運用業者への監督を強化する。運用体制などを定期的にチェックし、問題業者を発見した場合はリストを公表し、顧客には注意を促す。一般個人を対象にした小規模運用業でトラブルが発生しているため、監視を強化する。

現在、金融庁に届出をしている少人数対象の投資運用業者は、3,000
社を超す。しかし、顧客資産が管理されていないなどの問題が発覚する例が増えている。未公開株詐欺の受け皿として利用されているケースさえある。

そこで金融庁は2012年4月以降、少人数対象の投資運用業者の管理体制や運用体制などを、定期的に書面で調査する事にした。これまでも書面で調査して来たが、今後は対象とする投資家の実態なども詳しく確認する。

プロ投資家の名義を貸す専門家に報酬を支払い、個人に対して運用実態を偽る事例が多発している
からだ。

問題がある場合は、より詳しく報告を求めたり、「警告」を出したりする。書面調査の回答がなかった場合などは、「問題業者」としてリストを公表し、投資家に注意を促す。
問題ない業者についても名称や届け出などを全て開示し、透明性を向上させる。

これからは自分達でよく調べて考え、行動しましょう。この国の「専門家(プロ)」や「マスコミ」や「業界団体」の多くは、それほど聡明でもなければ、頼りにもなりません。時には意外と低レベルです。

401
K(確定拠出年金)導入も、メリットあり。

確定拠出年金(日本版401
k)は、2001年10月に始まり、2011年4月末時点で企業型の加入者が約371万人、個人型の加入者は約12万人と拡大中です。ここ数年で急激に導入する企業が増え、すでにおよそ1万5,000社が加入しています。確定拠出年金の大きなメリットは、従来の企業年金同様に、掛け金が非課税(所得控除)になる事と、運用益の課税を繰り越せる事です。

従って、ある程度以上の安定した所得がある人の場合、確定拠出年金に加入すると、月々の掛け金が非課税になる分のメリットだけでも、「確実な儲け」が計算できます。
勤務先の企業が厚生年金に加入しているだけで、企業独自の企業年金を持っていない場合、個人型の確定拠出年金に加入すると、月額2万3,000円、年間27万6,000円まで非課税にできます。適用される税率によりますが、メリットは小さくはありません。企業にもメリットがあります。年金の掛け金分の従業員の所得が圧縮され、社会保険料が安くなります。

確定拠出年金の場合、個人の年金資産残高が明確で事後的な削減対象になりにくく、年金受給権の保護に優れている点もメリットです。また、企業間の持ち運びが容易なので、転職時にも有利です。

確定拠出年金(日本版401k)は企業年金の一種ですので、会社が決まった額の退職金を支払うのではなく、毎月会社から渡される退職金の「元になるお金」を従業員自身が運用し、将来退職する時に自分で受け取るという制度です。つまり自分の運用結果で、退職金の金額が変わるというものです。

年金確保支援法によると、確定拠出年金を導入する企業は、従業員に対して継続的に投資教育する事が義務付けられています。

円高圧力が緩和傾向の現在、海外投資にも目を向けるべきでは?

参考資料 日経ヴェリタス2012年3月4日号 21ページ

一般的な投資家は先進国の債権は沢山持っているが、新興国の債権はそれほど持っていない。

これでは世界経済の成長のメリットを受けられないとの見方がある。

一部の年金基金などが新興債権への投資を始めている。新興国の社債は投資適格でも利回りが6
~7%ある。

今後は信用力が改善し、社債価格が上昇するものも出るだろう。

・・・南欧諸国などよりも格付けが高い新興国なら、現在も結構ありますね。あくまでも自己責任とはなりますが、運用次第ではそれなりに好成績も見込めそうです。

【※】当コラム記事は、AOIA 株式会社のスタッフが個人的見解に基づき作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料は、飽く迄もAOIA株式会社のスタッフが個人的見解に基づき作成した資料であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。当資料中に記載している内容、数値、図表、意見等は資料作成時点のものであり、今後予告なく変更することがあります。当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。当資料をもとにお客様が金融商品取引行為を行われた場合、金利、通貨の価値、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として生じる利益あるいは損失は、すべてお客様に帰属します。


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