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2012年8月3日(金) 貿易赤字基調でも円が買われる理由とは?

  • 投稿日:2012年8月3日

「読めば明日の力になる 個人投資家の世界の経済・金融研究日記」

201283日(金)by Dataと小勝負(AOIAアナリスト)

今回は、為替の謎の解明に、挑んでみましょう。

初耳の話もあるかと思いますが、日本円の「需要量」と「供給量」をキーワードに読み進めると、意外と分かりやすいかもしれません。

今年上半期の日本の貿易収支は、2.9兆円の赤字となりました。赤字幅は、2011年上半期の9632億円からおよそ3倍に膨らみました。実はこれは、第2次オイルショックで輸入が大幅に増えた1980年上半期の2.6兆円を超える、過去最大の赤字です。

震災以降この1年4カ月余りの間に、円は名目実効レートベースで9.1%上昇、対米ドルでは5.8%ほど上昇しています。なぜ、日本の貿易収支は赤字基調なのに、円は上昇しているのでしょうか?

貿易収支以外の片道切符の円売りフロー(資金の流れ)が重要

為替の世界では基本的ですが、つい忘れがちな大切な事があります。「為替相場は実際の取引の需給関係で決まる」のです。貿易収支が赤字になれば確かに円売りのフローは発生しますが、当然その他の取引フローも存在するため、それらも含めて一緒に考えなければならないのです。

特に2~3カ月間の為替相場の動きには、投機的な売買がより大きな影響を与えると考えられています。しかし、こうした投機的な売買により積み上げられたポジション(持ち高)は、利益(損失)確定のための反対売買によって、結局は手仕舞い(買い戻しや転売で取引を終了させること)されます。

したがって、半年以上の長期間の為替相場にとっては、投機的な売買が与える影響は一応中立的とみなせます。一方、貿易収支から発生するフローは、手仕舞いを伴わない片道切符のフローなので、累積効果が馬鹿にならず、長期的な為替相場の動きに重要な影響を与えると言えそうです。

ただ、片道切符のフローは貿易収支以外にも、証券投資や直接投資など実はいろいろなものがあります。為替ヘッジや外貨ファイナンスなどで為替相場に影響を与えないフローも存在するため厳密な分析は困難ですが、そうした制約も踏まえた上で、大きな資金の流れを確認する事が重要です。

為替相場に影響がありそうな資金フローを見ると、2.9兆円の貿易赤字のほかに、3.8兆円の直接投資、1.6兆円の日本人投資家による対外証券投資が円売りフローとして加わります。つまり、今年上期の片道切符の円売り額は合計でおよそ8.3兆円だったと推計できます。

その一方で、所得収支(6.6兆円)、外国人投資家の日本株・債券投資(3.6兆円)から発生した片道切符の円買いは10兆円を超えると推計できるため、統計上、今年上期の片道切符のフロー(資金の流れ)は、円買いの方が多かったと言えます。

また、欧州周辺国の財政問題などで「リスクオフ」となっている期間が長期化している現在、日本が抱えるおよそ250兆円もの対外純資産の国内回帰や為替リスクヘッジのための円買いが増加している可能性も、考えられます。

さらに、海外主要国の金利が低下している事もあり、日本人投資家の対外証券投資に絡む円売りが減少しています。

加えて、外貨の調達コストが大幅に低下しているため、対外直接投資が円売りではなく、外貨調達で行われるケースが増えている可能性が考えられます。実際の円売り額は統計上のものよりも少ないのかも知れません。統計数字がすべて正しいとは限らないのです。統計数字の算出根拠までさかのぼらないと、本当の姿は容易には見えない事さえあり得ます。

今後、大方の予想に反して黒字基調に戻ったとしても、その他の片道切符の円売りフローが増加すれば、結果として円安になる展開もあり得ます。貿易収支や各国の物価水準は確かに中長期の為替相場の予測には重要ですが、その他の要素やフロー(資金の流れ)と同時に分析して初めて、深い意味での相場動向の有効な判断材料となりそうです。

今回は、以上になります。

時にはこうしたハイレベルで本格的な内容も、扱っていく予定です。

【※】当ブログ記事は、AOIA 株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料は、飽く迄もAOIA株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。当資料中に記載している内容、数値、図表、意見等は資料作成時点のものであり、今後予告なく変更することがあります。当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。当資料をもとにお客様が金融商品取引行為を行われた場合、金利、通貨の価値、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として生じる利益あるいは損失は、すべてお客様に帰属します。


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