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欧州大手銀行ストレステスト(健全性審査)の要点とユーロ圏経済最新事情

  • 投稿日:2014年11月12日

今回は、皆さんも気になっている「欧州大手銀行ストレステスト(健全性審査)の要点とユーロ圏経済最新事情」について、ご一緒に考えてみましょう。本ブログは、今週公開のAOIA会員向けニュースレター「週刊先読みダイジェスト第58号」の要点の一部を、再編集したものです。

欧州銀行ストレステストの要点とは?

 欧州の規制当局は10月26日、域内の大手銀行150行のストレステスト(健全性審査)結果を公表した。金融危機の再来を乗り切るだけの力があるかどうかを見極めるため、バランスシート上の資産価値や、その資産価値が金融、経済的ショックを受けてどの程度失われるか、また各行にその損失を吸収する力があるかどうかを精査した。対象となる資産は住宅ローンから債券、法人融資まで幅広い。

1)ストレステストの目的は? ストレステストには、弱体化した銀行を排除し、域内金融システムの安全性を投資家に証明する狙いがある。

2)実施主体は? ユーロ圏18カ国に来年1月1日付で加盟するリトアニアを加えた計130行のストレステストは、欧州中央銀行(ECB)が各国当局の協力を得て実施。一方、欧州銀行監督機構(EBA)は英国などユーロ圏非加盟国も含めたEU28カ国の123行を担当する。想定するストレスシナリオは同じだ。テストで使用する資産の価値を評価する「資産査定(AQR)」はECBと各国当局が実施した。

3)なぜ今実施するのか? EU関係者によれば、国ごとの監督当局はそれぞれの銀行業界の問題について、その影響を恐れたり、クロスボーダーリスク(国境を越えたリスク)の把握を怠ることで、うまく特定できないこともしばしばだった。ECBには銀行監督業務を引き継ぐ11月4日までにストレステストを完了し、従来の問題への対応を済ませる狙いがあった。

4)資産価値に関するテストとは? 今回はこれまでのストレステストと異なり、まずAQRを実施した。AQRでは銀行が資産価値を過大評価していないかをチェックした。シミュレーション化した3年分の衝撃に耐えられるかどうかを確認する実際のストレステストは、AQR完了後に開始した。ECBは、EBAのストレステスト対象に含まれていないユーロ圏の約30行についてもAQRを実施している。

5)合格には何が必要? AQR後、経済が2016年まで基本シナリオ通りに進んだ場合に求められる中核的自己資本はリスク加重資産(RWA)の8%以上。EUが2年のリセッション(景気後退)に陥り、リーマンショック後にみられたような市場のパニックが起こることを想定した危機シナリオのもとでは、5.5%以上だ。

6)不合格になったら? 不合格になった銀行には、新株発行または資産売却による自己資本増強が求められる。民間から十分な資本が得られない場合は、政府支援が必要となる可能性もある。だがその前に株主、劣後債保有者が損失負担を求められる。

7)その後は? 不合格になった銀行は2週間以内に資本増強計画を提出する必要がある。AQR、またはテストの基本シナリオで不合格になった銀行は、6カ月以内に計画を実行に移す必要がある。危機シナリオだけで不合格になった場合は9カ月与えられる。

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 欧州中央銀行(ECB)は10月26日、ユーロ圏の主要銀行130行の資産査定(ストレステスト)の結果、ギリシャの銀行など25行が「不合格」となったと発表した。資本不足の総額は約250億ユーロ(約3兆4000億円)に達した。債務問題を背景とする南欧銀行の厳しい経営状況が改めて浮き彫りになった。

25行のうち12行はすでに約150億ユーロの増資を行い、資本不足を解消した。だがギリシャのナショナル銀行など13行は資本不足のままだ。

 25行の内訳ではイタリアが9行、ギリシャが3行、キプロスが3行で、南欧の金融再生の遅れが鮮明になった。保有する国債の価格下落や、融資の焦げ付きなどが重荷になっている。ドイツ銀行など欧州の著名な大手銀行は「健全」とみなされた。

査定の対象地域となったのは来年に通貨統合に加わるリトアニアを含めたユーロ圏19カ国。ここで営業する主要130行の保有する有価証券や、貸し出し内容などを厳しく精査した。そのうえで景気が失速したり、金融市場が混乱したりした場合でも経営が続けられるかを、2013年末の資産を基に点検した。5.5%の中核的自己資本比率を維持できると見込まれる銀行は「健全」とみなし、それ未満であれば「資本不足」と認定した。

今回は11月からECBがユーロ圏内の銀行監督を担うのを前に、ECB主導で初めて実施した。

 私が特に注目したのは、(不合格)25行の内訳ではイタリアが9行」だ。実はイタリアは、過剰な政府債務と不景気、多すぎる体力不足の金融機関と資金供給量不足、そして高金利の悪循環から、抜けにくくなっている。イタリアでは主要15行のうち、実に9行が資本不足だった。その結果、イタリアは銀行改革の余地だらけの非効率ぶりだ。銀行部門は非効率で収益力の面で苦戦中だ。英国とイタリアの経済規模は同程度ですが、イタリアの銀行は資産量では英国の半分弱で、しかも銀行数は英国の2倍近く、支店数は3倍程度もある。

 ECBが、欧州主要銀行の資産査定結果を反映させて資産価値を再評価した結果、31行の自己資本が、投資家が安全と見なす基準である10%を下回り、28行がこの基準をわずか1%上回る水準となった点も「余裕のなさ」を示唆し、気がかりだ。

「不合格」の銀行は来年7月までに増資を終える見通しで、一応は経営体力を取り戻す予定だ。

 しかし、欧州中銀の思惑通りに銀行が完全再生するかは、不確かだ。南欧景気が低迷し、銀行の収益源となる融資は伸び悩んでいる。最長4年間にわたり銀行が欧州中銀から低利で資金を調達できる仕組みを9月に導入したものの、申し込みは事前予想を下回り、「結局、金融再生には景気回復・デフレ(傾向)脱却が必要なのでは?」との、かつて日本で散々言われた議論が、欧州でも続いている。このままでは「欧州版 失われた10年」が、始まりそうだ・・・・。

実は欧州銀行はストレステスト合格行でも資本不足?

 投資家は欧州の銀行ストレステスト(健全性審査)を鼻であしらった。審査結果の発表を受けた27日の市場では、審査に合格した銀行と不合格行の両方が売り込まれた。これは合格印が必ずしも中期的な資本の万全性を意味しないからだ。

 さらに悪いことに、ストレステストには興味深い盲点がある。最悪のストレスシナリオでは大幅なマイナス成長を想定しているが、ユーロ圏全体がデフレに陥ることは想定していないのだ。現在、デフレ突入は現実味を帯びている。実際にユーロ圏全域で物価が下がり始めれば、銀行顧客は債務返済が難しくなり、銀行の損失は膨らむだろう。

 結論としては、合格した銀行が気を緩めるのを、投資家は許すべきではない。情報開示が進んだのを奇貨として経営陣の尻を叩き、増資を迫るべきだ。これは27日に株価が下落した銀行だけでなく、上昇した銀行にも同様に当てはまる。

欧州銀行のストレステストの頼りなさに関する話は、まだある。

 欧州銀行の国債投資額は計2兆7000億ユーロに上るものの、ストレステストでは自己資本は170億ユーロしか減らず、減損額も190億ユーロに過ぎないのは、「政府債務危機の過小評価」かも知れない。

 しかも、銀行がなお直面する巨額の訴訟費用も含まれず、ロシアに投融資している銀行ではウクライナ危機の影響も反映されていない有様だ。「対象130行の総資産は22兆ユーロにのぼるのに、資本不足が246億ユーロなのは少ない」との指摘もある。批判派は「欧州の銀行の信頼を回復するには、これを上回る増資が必要なのは確かだ」と、主張している。

ところがECBは、「銀行の実際の増資必要額はもっと少ない」と、強調しているのだ。

冷静に考えれば「まだまだ甘い評価」で、「より本格的な調査・評価の第一歩」だろう。

「今後のより適切なストレステスト」には、以下の様な減速気味の欧州景気も考慮すべきだろう。

欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は2014、15年のユーロ圏成長率見通しを下方修正した。ドイツとフランス、イタリアの予想も引き下げた。欧州委の4日の発表によると、14年のユーロ圏成長率は0.8%、15年は1.1%の見込み。5月時点はそれぞれ1.2%、1.7%と予想していた。ユーロ圏の15年インフレ率は、欧州中央銀行(ECB)の見通しを下回るとの見通しも示した。

 「こうした状況下、いよいよ欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏各国の国債購入を伴う大規模な金融緩和を行うのでは?」とのマーケットの期待感が、ドラギECB総裁の「決意表明」を反映してまた高まっているが、実は欧州中央銀行(ECB)内部でさえ一枚岩ではなく、ドイツなど主要ユーロ加盟国への根回し不足もあり、そう簡単に年内に実行とは行かないかも知れない。

 

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今回は、以上になります。AOIAフェローのDataと小勝負からでした。

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