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日本国債を考える (3)

  • 投稿日:2012年8月6日

日本国債を考える(3)

今後予想されるリスクと現実的な対応策について

Dataと小勝負(AOIAアナリスト)

■社会保障費の歳出カットなしで消費税率10%、国債金利3%だと、2025年頃には極度の財政危機発生も・・・

2010
年の日本の国民医療費は36.6兆円だが高齢化の進展と共に年々増加し、政府試算では2025年には何と名目額で60兆円まで膨張する。国と地方の公費負担分は40%弱で、日本の社会保障支出の相当額を占める。現状の負担率で試算すると、15年間で実に10兆円近い支出増加要因になり、これは現在の国債利払い費にほぼ相当する。なお、介護総費用も年々巨額化している。2010年度は7.9兆だが、政府試算によると現状の制度が続くと2025年には名目額で実に17兆円に達する見通しだ。

・・・医療・介護費だけで、2025
年度の政府負担額は軽く30兆円を超える。その頃の日本の国債(政府債務)残高は、消費税率が10%程度の低水準のままだと1,500兆円規模に巨額化し、金利が仮に3%まで上昇すると、利払い費だけで45兆円は消える。合計で軽く年間75兆円が必要だが、2012年度の国の一般会計歳出総額は90.3兆円に過ぎない。仮に消費税率を10%まで引き上げても、一般会計歳出総額は100兆円程度にしか増えない。今後の日本の財政運営にとって、国内超低金利の維持こそが死活問題である事が、この試算からは嫌でも分かる。

個人的には、おおむね国内インフレ率0~1%、長期金利2%未満の条件下でないと、日本の財政運営は困難を極めると考えている。
「日経ビジネス2012年2月27日号」の記事には、消費税率30%突破の可能性まで書かれているのが現実だ。

「誰がギリシャを笑えるか?」という厳しい展開も意識して、資産運用を含めた人生設計をして対策を着々と実行して行かないと、今後の私達の生活水準の維持は、相当困難になりそうだ。

■日本国の歳出削減の現実的な方法について

日本の公務員総人件費のGDP比は6
%とOECD加盟国では最低レベルで、英仏の半分程度に過ぎない。仮に、日本の全公務員の人件費を30%ほど減らせても、実は財政赤字は期待ほどには減らない。

本当に資金繰りが厳しくなった場合はむしろ、現時点で100兆円規模に巨大化した年金・医療・介護などの社会保障費用が集中的に削減の対象になりやすい。「増税反対」は結構だが、その結果国債金利が高騰すれば結局年金などが削減され、本人が大損しかねない。

■通貨供給量増大によるインフレで、実質的な国債残高は減らせそうか?

結論から言えば、意外と難しい。
既に日本国内には国際的に見ても過剰なお金があふれているが、いまだにデフレ(物価下落)だ。国際決済銀行(BIS)によると、2011年末の現金流通高のGDP比は、日本は19%、ユーロ圏は10%、米国が7%程度だ。2011年末の現金流通高を人口で割ると、円は1人当たり約69万円となる。ドルは円換算で26万円程度、ユーロは同27万円程度と推定され、日本の1人当たりの巨額ぶりは明らかだ。また、日本の様な経済大国の場合、経済・金融・財政危機が起こっても、途上国や新興国程は通貨が急落しにくい事は、今回のユーロ危機時におけるユーロ下落率の中途半端な低さを見ても、明らかだ。輸入インフレで物価2倍には、簡単にはならないだろう。このルートからの国債の元利金払いの負担軽減も、あまり多く望めそうにはない。

結局は増税も含めた他の方法を試みるべき時だ。歴史的にも理論的にも国家の財政難解決方法は、無秩序な債務不履行(デフォルト)か、インフレによる政府債務の実質的な切下げか、増税しかないのだ。

■いずれ日本の消費税率は20
%を突破か?

スウェーデンの消費税率は25
%。イタリアは20%だが2012年9月には債務危機解消のために23%に引上げる予定だ。EU加盟国の大部分やロシアや中国の消費税率(付加価値税率)は、すでに20%前後に達している。

日本の名目成長率がゼロのままだと、公的債務(政府の借金)増加を止めるだけでも、消費税率を約20
%にまで引上げる必要があるとの試算まで存在する。社会保障充実と債務返済のためには、果たして消費税率を何%まで上げる必要があるのだろうか? ちなみに、消費税率1%分の増税額は、年間2.5兆円程度に過ぎない。

私は、日本の消費税率が20
%を超え、年金・医療・介護などの社会保障費が今後も削られて行く日が遠からず来る事を、強く意識している。その時は誰も助けてはくれない。助けた国や国際機関が破産しかねないからだ。高齢化と公債費残高の増額は比例関係にあり同時進行しているが、30年前に8%だった高齢化率(65歳以上が総人口に占める比率)が、現在は23%で、2020年には29%まで上昇し、2050年には40%に達する見通しだ。高齢化に伴う歳出増加分は景気回復による税収回復だけではとても埋めきれない。まだ高齢世代に資産が集中し余裕がある今のうちに、私たち自身もしかるべき負担を引き受ける、税制と社会保障の改革に踏み切るべきだ。高齢者が保有する金融資産などにも課税し、世代間の公平を進める必要がある。将来の高齢者(現在の若者・中年)は、現在の高齢者よりも平均的な資産額がはるかに少なく低収入の人も多く、いくら増税してもそれほど税金を払えない。確かに消費税率10%程度では、低過ぎる。

■そして、円安と輸入インフレ進行のリスクが次第に増大する・・・

米国
の民間・政府を合わせた総債務残高は、2008年に対GDP比で296%だったが、2011年には279%まで減少。特に民間部門は2011年には199%まで減少し、家計部門の債務削減も着実に進む。債務削減のゴールまでは、最短であと2~3年だ。欧州各国は総債務残高がほぼ横ばいで推移し、ゴールはまだ先になる。

日本の状況はより危うい。総債務残高は2008
年の473%から2011年には512%まで拡大した。最大の理由は、政府債務が2008年の189%から2011年には226%まで増加した事で、ほとんど解決の道が見えない。

日本円の根本的な信用性に関わる問題で、中長期的には1
ドル100円強の米ドル高・円安の展開もありそうだ。

だがこれは、私達の様な海外投資を行う個人投資家にとってはチャンスでもある。為替リスクが消え、外貨建ての利回り以上に円ベースで収益を得られる、まさに千載一遇のチャンスが、おそらく何回か訪れるだろう。

■今後の日本国債の問題を大きく左右しうる重要課題とは?

1、ボルカールール
銀行の国際的な新自己資本比率規制(バーゼル3)でも国債はリスクゼロ資産と見なされ、日本の銀行が保有する国債残高は膨張中だ。だが、金利が反転し上昇を続けると、損失が増大する。市場が金利反転リスクを意識するきかっけとして現在有力視されているのが、米国が導入を検討中の「ボルカールール」だ。このルールは米銀に自己資金による債券売買を禁じている。日本国債も売買禁止対象のため、適用されると米銀が日本国債の取引を縮小しかねない。そうなると流動性が低下し、金利が短期的に高騰しやすくなる(大手銀行)。

「ボルカールール」は、2012
年7月から段階的に適用が始まる。金融庁や日銀は日本国債を例外とするよう米政府に求めているが、認められるかどうかは不透明で、残された時間はあまりない。

2、日銀の今後の対応
国債金利が上昇すると、日本の財政の利払い負担は増大し、増税や年金支給額切下げなどの負担増につながる確率は上昇する。「国債は日銀に買わせればよいではないか?」との意見は当然あろうが、中央銀行の国債購入は本来義務ではなく、担保も曖昧で、どちらかと言えば政治的圧力を感じた受け身の行動か、(見かねて)善意でしている面が強く、長期的には保証されてない。無理に続けても国債の格下げや金利上昇、円安や輸入インフレなどのリスクが増大する。日本ほどは深刻化しないだろうが、米国とFRBの関係も似た様なものだ。

なお、前回のコラムでもご紹介したが、2012年2月14日発表の日銀の国債買い取り政策について、国内有数の実力派経済コラムニストの野口悠紀雄氏がダイヤモンドオンライン上で、「日銀の国債購入で財政問題は解決か?」という名前の実に興味深いコラムを発表している。全文をご覧になりたい方は、こちらをご覧いただきたい。http://diamond.jp/articles/-/16269

・・・・やはり、中央銀行の国債買い取りだけでは、国債問題は片付かない。増税も含めた他の方法と併用する必要がある。

3、ゆうちょ銀行の会計基準 最悪の場合は経営問題発生か?
情報源:週刊エコノミスト2012年2月21日号37ページ記事 内閣府の2010年度経済財政白書によると、経常赤字国では財政赤字GDP比が長期金利の上昇に与える影響は、経常黒字国に比べて3倍大きくなると、推定している。2011年度の日本の財政赤字(GDP比9.6%)を推計式にあてはめ、他の要因を不変とすると、経常黒字から経常赤字に転じた場合、長期金利は約1.8%も上がり、10年物国債だとおよそ3%まで上昇する計算だ。

以下は、日本の長期金利が1.8%上昇し約3%となった場合の影響度合いを示した表の、抜粋版である。

2011年3月の

国債保有残高(兆円)

国債評価損(兆円) 中核的自己資本

(Tier1)減少率

評価損÷実質業務純益

2011年3月時点

三菱UFJG 44.9 2.3 14.1% 1.5倍
みずほFG 30.5 1.2 11.9% 1.7倍
三井住友G 25.9 1.1 10.5% 1.0倍
3メガ合計 101.4 4.7 12.5%(平均) 1.4倍(平均)
ゆうちょ銀行 146.5 9.8 68.1 19.2

※国債評価損は、国債が期日に(元利金が全額)償還されれば(無事に)回復するが、確実ではない。

・・・圧倒的にゆうちょ銀行に負担が集中している。ゆうちょ銀行に対して今後どの様な会計基準を適用するのかは、実は日本国債の安定消化・保有の隠れた大きな課題であり、軽視するといずれ痛い目に遭うと私は考える。

また、平均値としてはメガバンクよりも地銀の様な中小国内金融機関の方が、国債金利上昇による自己資本比率の低下度合いが深刻化する傾向がある。日銀によれば、長期金利が1%上がると地銀の自己資本が30%減少するので、4%上がると債務超過になる。今後は、取引先金融機関の国債や地方債の保有状況を確認する事も、企業の危機管理上の必須ノウハウとなろう。

4、財政健全化努力・デフレ脱却・経済成長率加速

国債相場は「印象」が大切だ。
財政再建が成功するかどうかは別としても、日本は今後も財政健全化に積極的に取り組むとアピールし続けないと、ユーロ圏の様な金利高騰に見舞われかねない。財政再建は長時間かけて地道に進めて行くしかない。結局は日本企業の成長力を維持・向上させ、経済規模を拡大する事が優先課題だ。

5、
世界と日本のインフレ率と金利
これこそが最重要ポイントだろう。
日本の財政安定には低いほど望ましく、われわれ海外投資を行う個人投資家にとってはある程度高い方が良いが、どこかにバランスが取りやすい均衡点が、もしかしたら有るかも知れない。

■もはや国には頼れない・・・自分達の生活を守るための第
2の収入源として、海外資産運用を!

現在の厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢は60
歳だが、2013年度から3年毎に1歳ずつ上がり、2025年度には65歳になる。日本国債の問題以前の私達の老後の生活費確保という意味でも、今後の円安を活かした海外投資による資産運用は極めて重要だ。以下は、今後比較的有望と私が考える金融商品だ。

1、外貨建ての優良な債権・ファンド・ETF・株式など
日本(円)への過度の依存はそろそろ危険だ。
一般には知られていない特殊で高利回りで安全性の高い金融商品も、実はある。オフショア投資が正しいかどうかは、コストや流動性などが外部から見えやすいかどうかを判断材料にするのも、良い方法だと思う。

2、金
ドル建てなので円安時には価格が上昇しやすく、売買価格が消費税込なので、消費税増税前に購入し上昇後に売却すると、増税分の利ざやを稼ぐチャンスがある。値頃感がある時に押さえられるかがカギ。

3、円安による輸出増が見込める日本企業の株
日本国内の売上・利益の比率が低く、独自性と価格競争力のある商品やサービスを提供でき、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)等で魅力的なら検討余地あり。
例えば自動車産業の場合は国内依存度が高く、微妙なものがある。国内の販売減による売り上げ・利益減以上に円安による海外での売り上げ・利益増加が見込めて、はじめて検討対象となろう。

日本の将来に懸念を感じる人は、すぐに動かせるお金を確保しておいた方が良い。また、保険会社が加入者に低金利で融資してくれるケースなどの低コストな資金調達方法を事前に調べておく事も、急激な為替・金融変動時には資産運用面で効果を発揮する可能性があるので、個人的にはお勧めだ。

なお、以下は海外投資に関する基本的だが意外と知られていない重要情報だ。
ハズレの海外投資助言会社に関わらずに済む、簡単で実用的な目安となろう。海外投資をしても、大部分の人には日本の税率が適用され続ける。

100万円超の現金を海外に持ち出す際は、関税法などに基づく申告義務が発生する。怠った場合は5年以下の懲役かまたは500万円以下の罰金という罰則がある。

・現在の日本のルールでは、被相続人(亡くなった人)と相続人(配偶者、子供など)が5
年間は日本国内に住所が無い(実際に住んでいない)場合に、海外資産は日本の相続税や贈与税がかからなくなる。日本の課税制度は日本国籍かどうかという「属人主義」ではなく、日本に(その年に183日以上)居住しているかどうかを基準とする「属地主義」をとっている。日本の居住者は海外での利子・配当所得や外国株などの譲渡益も、日本国内での課税対象になる。このため、原則として日本国内で確定申告の上、納税が必要になる。

・ハンドキャリー(手荷物扱いでの内密の海外への現金移動)による現金の持ち出しは、発覚すれば国によっては現金没収のリスクがあるので、あまり通用するとは考えない方が良い。

・海外移住が節税として有効なのは、5
億円~10億円といった資産を持ち、しかもその大半が金融資産といったごく限られたケースのみだろう。大半の人は該当しない可能性がある。

【※】当コラム記事は、AOIA 株式会社のスタッフが個人的見解に基づき作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料は、飽く迄もAOIA株式会社のスタッフが個人的見解に基づき作成した資料であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。当資料中に記載している内容、数値、図表、意見等は資料作成時点のものであり、今後予告なく変更することがあります。当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。当資料をもとにお客様が金融商品取引行為を行われた場合、金利、通貨の価値、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として生じる利益あるいは損失は、すべてお客様に帰属します。


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