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日本国債を考える (1)

  • 投稿日:2012年8月5日

日本国債を考える (1)

国債格付の意外なルールと、一見安定的な日本国債の課題とは?

by Dataと小勝負(AOIAアナリスト)

日本の国家債務GDP比約200%(1,000兆円弱)は財政難の米国の約2倍、あのギリシャよりも悪い。だが以下の見方も有力だ。「日本国債の92%は日本人(企業)が保有し、家計も企業もまだ資金があり経常収支は黒字。対外純資産が約250兆円あり将来外国が国債を購入する「担保」は充分。過去20年間で残高4倍だが国内金利低下で昨年の利払い費は20年前より少ない10兆円弱だ。昨年S&PがAAからAA-へ、ムーディーズがAa2からAa3へ、各1段階格下げしたが当面は安心だ。実際、欧州債務危機後に長期金利は低下した。

■確かに今まで世界各国の国債は「A」格以上の格付ならデフォルト率は0%だったが・・・・

国に国債格付が必要な理由は、債券市場で有利に資金調達する為だ。
現在は国以外の発行体の信用力評価を主目的に、非依頼ベースでの(勝手)格付も多い。国債格付急変は、国の資金調達コスト上昇と資金調達力縮小を招く。実は格付は「相対的な集団としての信用力を示すランキング」で、債務不履行の絶対量の計算は出来ず、個別発行体のデフォルト率も意味しない。S&Pレポートでは、1975~2010年の外貨建て国債の10年後の累積平均デフォルト率は、AAA~A格が0%、BBB格が5.61%、BB格が12.28%、B格が28.08%だ。昨年は多数の国々の国債が格下げされたが、ギリシャやポルトガルなど一部を除きその多くは信用力の相対的低下を意味し、デフォルトリスク急増を示唆するものではない。格下げされた米国債の金利が低下したのは、国債は格下げされても発行国では大抵リスクゼロの金融商品として扱われ続ける為だ。国家デフォルト率は一般発行体に比べ統計上は低いがサンプル数不足で、デフォルト統計で国家格付の信頼性の正確な議論は、まだ難しい。

■格付はこうして失敗する

格付失敗を測る目安は、近年ユーロ圏諸国を対象に行われた様な、短期間に急激・大幅な格付調整が行われた場合だ(イベントリスクを除き1年間に3段階以上調整)。「格付会社は危機が起きるまで事態を予測できず行動が遅れ、起きた後に過剰反応して格付を急激に下げ過ぎた」と批判される。格付利用者の多くは格付に対し、即時性と安定性を同時に求めるが、両立は困難だ。格付会社は妥協案として、発行体の信用力を支える要因が、一時的ではなく構造的(長期的)に変化する可能性が高いと確信した場合に、初めて格付調整を行う。格付会社により高い透明性・説明責任を求める傾向も、格付の即時性を妨げる。財務状況がいくら悪くても債権購入者が充分いれば債務者は倒産しないし、逆にいくら良くても債権購入者が足りないと債務者は倒産する。明暗を分けるのは、債権購入者が金利とリスクのバランスを許容範囲内と判断するかどうかだが、判断の根拠は曖昧だ。

確かに財務悪化はデフォルトに直結しないケースが多いが・・・

国債格付の場合、国が通貨発行権・徴税権を行使し、紙幣増刷や増税で資金調達が相当期間継続して行える。
その政治的判断・意思・実行力という、極めて政治的で高度な判断も必要な国債格付は、格付会社には本来難しい分野だ。更に、国が債務不履行に至る経過と早さが企業などの一般発行体と異なる為、両者を別基準で評価すべきとの意見まである。国債格付の判断要因として多くの格付会社が挙げるのは、一人あたりGDP、財政収支、対外債務、実質経済成長率、過去の国債デフォルト、インフレ率、経済発展段階等だ。日本はいくつかの指標で悪化が続き他の先進国に比べ相当劣る。国家債務GDP比は既に先進国中最悪で、消費税率を10%に引上げても悪化が続く。格付会社は政府が責任を負う可能性のある地方公共団体・財投機関の負債や年金・保険等の社会コストも国債評価に含める為、調整後の日本の国家債務GDP比は、他国に比べ更に悪くなる。

経済・財政の再建を急げ!

税収や国債残高等の国の信用力悪化が国内投資家の許容限度を超えれば、デフォルトリスクが上昇し、比較的急激で大幅な格付調整があり得る。国の信用力がこれ以上悪化しない様、経済・財政再建を進める事が急務だ。
国内政治状況も絡むため、状況を冷静に判断できるのは実は(外国の)格付会社よりも私達自身だ。国内投資家の社債志向は国債より低く、機関投資家の社債投資はリスクを考慮して慎重だ。日本国債のA格以下への格下げは民間企業の借入金利上昇と調達可能な資金量減少をもたらし、格下げが続くほど影響は深刻化する。更に、金融不安や国内金利上昇等を通じ、消費不振や企業倒産・失業増、財政状況悪化と増税と不景気の悪循環、社会保障制度劣化等の、長期的危機の引き金になりかねない。そして現在、日本国債を巡り静かに異変が起きつつある。次回のコラムでは、この問題と対応策についてより深く考察する。

【※】当コラム記事は、AOIA 株式会社のスタッフが個人的見解に基づき作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料は、飽く迄もAOIA株式会社のスタッフが個人的見解に基づき作成した資料であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。当資料中に記載している内容、数値、図表、意見等は資料作成時点のものであり、今後予告なく変更することがあります。当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。当資料をもとにお客様が金融商品取引行為を行われた場合、金利、通貨の価値、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として生じる利益あるいは損失は、すべてお客様に帰属します。


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