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2012年8月14日(火) 大手メガバンクでも販売された「為替デリバティブ」商品のリスクとは?中 本論

  • 投稿日:2012年8月14日

「読めば明日の力になる 個人投資家の世界の経済・金融研究日記」

本論 2012814日(火)by Dataと小勝負(AOIAアナリスト)

あなたはもしかしたら、「資産形成・資産運用」といえば、経済的に余裕がある一握りの人達の為の「大人の遊び」と思っているかも知れません。実は私もAOIA入社前は、漠然とそうしたイメージを持っていました。

ところが仕事柄、多様なファンドなどを調べてみて、予想外に「ハズレ」が多過ぎる事に気付き、唖然としました。

ちなみに、弊社AOIA代表の中田裕氏は、「本当にまともで経済的にメリットがある金融商品は一握り」と、結構正直に話してくれています。

それでは、本論に入ります。

多数の中小企業をカモにして来たM銀行の強引な商法の商材は、「為替商品」でした。

「為替商品」とは、「為替デリバティブを使った金融商品」の事です。使い方を誤ると、

中小企業でも億単位の損失が発生してしまう代物で、AOIAが理想とする「資産形成」や「資産運用」とは、まさに真逆な「金融商品」です。

そして、本来は企業経営の支えになるはずのこの商品をめぐり、最近水面下でトラブルが多発しています。昨今の円高ドル安により、契約した企業一社あたり数千万円から億円単位の損失を被る事態に陥っているからです。そして彼らの損失は、そのまま銀行の「儲け」と化しています・・・・! 日本の民間銀行の財務状況改善は、実はこうしたハイリスクな金融商品の大量販売と、日本国債売買益によって、相当部分が達成されて来ました。

この問題に詳しい弁護士によると、特に悪質性が目立つのがM銀行と言われていて、被害状況はもとより、実態調査への協力拒否や被害状況の隠蔽ぶりが目立ちます。

にわかに信じがたい話ですが、複雑な商品の実態を解明していけば、やはり〝いかさま賭博〟に近い商品を売りまくる現状が、浮かび上がってしまいます。

参考資料 強引な融資勧誘をきっかけに

〈中小企業向け為替デリバティブ取引状況(米ドル/円)に関する調査の結果について

(速報値)〉http://www.fsa.go.jp/news/22/ginkou/20110311-2.html

報道発表は、銀行が中小企業に売りつけている「為替デリバティブ」という金融商品について、金融庁が初めて行った実態調査の結果です。二〇一〇年九月三十日現在、驚くべきことに、約一万九千社に対して四万五百件の契約がなされているとの内容でした。この数字の背景にある「苦しみ」を、以下、実際に為替デリバティブを契約した企業主の体験を通じて、見ていきましょう。

「正直(自殺を)覚悟した。生命保険を確認した。命に代えてでも会社を守らないといけないと……」

そう話すのは東日本の某地方都市にある資材加工会社の社長Aさん(六十一歳)です。年間売り上げ約十億円、従業員三十人を雇用する地元の優良中堅企業です。Aさんは苦悩していました。原因は約五年前、M銀行と交わした「為替デリバティブ」契約です。この契約の為に、毎月数百万円の損失を何年にも渡って支払わされる事態となっていた為です。

為替デリバティブの仕組みは複雑ですが、ごく単純化すれば、

①銀行から会社に対して「銀行から(市場より)安いドルを買う権利」を差し出す。

②会社から銀行に対して「会社に向けて(市場より)高いドルを銀行が売りつける権利」を差し出す。

この①と②の「権利」を交換するという契約です。契約期間は五年とか十年といった長期にわたります。たとえば円安ドル高であれば、会社が権利行使して、安いドルを銀行から買います。その方が得だからです。逆に円高ドル安になれば、銀行の方が権利を行使し、市場より高い価格でドルを会社に売り続けるのです。この場合、会社は損をし、銀行は儲かります。為替デリバティブの問題の本質は、まさにこの銀行による「ドル売り」です。

Aさんの会社がM銀行に払うことになった毎月五百万~六百万円のカネも、昨今の円高ドル安により、銀行側が「割高のドルを売りつける権利」を行使した結果でした。損失はざっと二億円に上ります。資産運用や資産形成どころの話ではありません。

為替デリバティブを銀行が販売する表向きの理由は「為替変動リスクのヘッジ」で、販売対象者は輸出入など外貨決済をしている会社となっています。ところが実際は、輸出入業者以外に対しても、多数売られています。

「解約するには数千万円が必要」

Aさんが振り返る。輸入していなくても輸入品を扱っているのだから問題はない。行員はそんな説明をしたという。「今のレートで推移すれば利益が出る」「ドル安になる恐れは小さい」とも言った。勧誘は執拗だった。当時のレートは一ドル百十円くらい。それが百円ほどで買えるとの内容だった。これを毎月五万ドルで五年間続ける契約である。ドルが契約価格の百円を上回っている限り、差額分が会社の利益となった。

契約の翌月、事実約五十万円の「利益」が会社に入った。行員がやってきて、新たな契約を勧め、毎月五万ドル五年間の契約をさらに交わした。

毎月数十万円程度入っていた利益が損失に転じるのに一年を要しなかった。じりじり円高が進み、〇八年のリーマンショックを境に一ドル九十円台に。さらに八十円台から七十円台へ突入した。もはや「利益」どころではない。一ドル八十円のドルを百円以上で買わねばならない。毎月二十万ドル。契約書の取引額は十万ドルなのにどうして二十万ドルも買わなければならないのか。そこには「レシオ特約」というカラクリがあった。

銀行が「ドルを売りつける権利」を行使する際、取引量を二倍に増やすことができるというのが「レシオ」だ。予想もしなかった事態にAさんはM銀行に解約を願い出た。しかし、契約時の行員はすでに転勤しており、銀行の答えは「解約するには数千万円の解約金を払う必要がある」だった。

なぜそんな法外な解約金になるのか具体的な説明は一切なかった。

中国まで押しかけ「勧誘」

Aさんの話を聞けば、まさに博打同然である。ただ賭博なら顧客が勝つ可能性があるはずだ。その点について、為替デリバティブに詳しい玉川大学の島義夫教授は「為替デリバティブというのはリスクヘッジなどではない」としたうえでこう話す。

「投機、あるいはギャンブルといってもいいですが、買った者は円高になったら大損をする、円安になったら少しだけ儲かるという不公平なものです」

ギャンブルはギャンブルでも顧客が勝つ可能性はきわめて小さい代物です。なぜそんな事になるのかといえば、顧客が銀行に「勝つ」のは円安時ですが、その際、一定価格まで円安が進むと契約解除となる「ノックアウト条項」という特約までもが、付けられています。顧客が「勝ち」始めてもすぐに打ち止めになる、実に不利な仕組みです。逆に円高時は、先のレシオ特約で銀行がボロ勝ちできる。実に銀行に都合が良い「商材」なのです。

島教授はこれを、銀行が圧倒的有利。金融のプロなら絶対に手を出さない代物。それを『リスクヘッジ』を口実に素人に売りつける。ハイリスクローリターンのとんでもない商品です」と説明しています。

実は、2012年6月7日(木)に開催された、弊社AOIAの第10回講演会「日本における金融商品と投資教育の必要性」でも、講師の東海大学教授の新保 恵志 (しんぼ けいし) 氏が、ほぼ同内容の説明をされています。

この問題に詳しい弁護士によれば、「ある銀行の行員は、勧誘相手である中小企業の社長を追って、出張先の中国にまで押しかけた例もある」という。この取引がいかに銀行にとって「おいしい」のかを物語ります。

顧客はすべて金融の知識が乏しい中小企業。大企業は一社もないとの事です。銀行が中小企業をカモにした為替デリバティブ。被害が広範囲で深刻であることは、冒頭の金融庁調査からも容易に想像できます。確かに最近の日本のメガバンクの経営状況は、欧州主要銀行よりはましになりましたが、その裏には、「為替デリバティブ商品」などのハイリスクローリターンの金融商品を買ってしまった、多数の企業の犠牲もありました。

M銀行はトラブルの発生件数などに関する弊誌(情報誌「選択」)の取材に対して、「為替デリバティブは販売しているが、(顧客との訴訟、調停件数は)回答を差し控える」「従来より為替デリバティブ契約は、お客さまの為替リスクヘッジ・ニーズにお応えするための商品として取り扱いしている」という、限られた内容の回答をしています。

金融機関を刺激することを恐れてか、表面化した被害はわずかです。銀行側も、守秘義務の縛りをかけたADR(法定外紛争解決手続)で事態の表面化を抑え込んでいるともいわれています。それでも公に告発する動きが出始めています。前述したAさんは、事情に詳しい弁護士の助けを借りて、近くM銀行を相手取った訴訟を起こす予定です。経営者の善良さに付け込んだ銀行の為替デリバティブ。この問題が本格的に表面化する時は、決して遠くはありません。

今回は、以上になります。

次回は、日経ヴェリタスの関連記事などを参照しながら、この問題についてご一緒に考えてみようと思います。明後日の2012816日(木)に、発表予定です。

【※】当ブログ記事は、AOIA 株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料は、飽く迄もAOIA株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。当資料中に記載している内容、数値、図表、意見等は資料作成時点のものであり、今後予告なく変更することがあります。当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。当資料をもとにお客様が金融商品取引行為を行われた場合、金利、通貨の価値、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として生じる利益あるいは損失は、すべてお客様に帰属します。


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