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2012年9月3日 大停電で見えたインドの構造危機と、ハードランディング(失速)の危険性

  • 投稿日:2012年9月3日

2012年9月3日「読めば資産形成の力になる 個人投資家の世界の経済・金融研究日記」

こんにちは。Dataと小勝負です。今回はバリバリのデータ重視のお話をします。あなたも既に中国のハードランディング(失速)の可能性についてはご存知かも知れませんね。

私個人としては、欧州に次いで米国向けの輸出が減少し、穀物価格の高騰が豚肉経由で中国のインフレ再発と金利上昇を促進し、住宅や自動車などの消費が急激に落ち込む悲観シナリオが現実化した場合は、来年第2四半期の中国の経済成長率が5%台まで低下するリスクを、既に意識しています。

ただ、実はインドの方が状況は深刻かもしれません。一人あたりの経済力、国際収支、電力事情、国内の資金繰りなどで、残念ながらインドは中国に大きく見劣りし、2012年7月末には何と6億人を巻き込んだ巨大な停電騒ぎが起こり国際的な大ニュースとなりました。これは今後じわじわと、外国企業のオフィス業務請負業やインド国内のIT産業などの発展を阻んで行きます。しかも困った事に、問題はそれで終わりとは限らないのです・・・。

インドの電力産業は、想像を絶する程の困難に直面しています。個人的には、インドの長期的な格下げリスクと通貨ルピーの下落圧力は、決して低くはないと思います。

7月末にインドを襲った大規模停電は、確かに送電網の老朽化を警告していますが、発電燃料が不足する一方で、電力を購入する各州の電力局の多くが何と破綻しているのです!発電会社が抱える巨額の負債が不良債権化し、かつての米国並みの銀行危機が生じる危険性さえもが、既にフィナンシャル・タイムズ(FT)などの記事で、指摘され始めている有様です・・・。

このままでは銀行危機が到来する

急増するエネルギー需要を満たしインドの経済成長を促すには、エネルギー供給網に数千億ドル規模もの新規投資が必要ですが、インドの銀行はそんな巨額の資金を提供できる経営状態ではありません。すでに、経営の悪化したエネルギー企業への過剰融資を抱え、焦げつきの拡大を懸念しているのが、現実です。

これは極めて重大な問題です。上昇を続ける資本コストと高金利の重荷で、多くの発電会社の経営状態は既に相当悪化しています。

しかも困った事に、燃料不足で満足に発電できず、投資を回収できません・・・・

関連企業の投資は、表面的には実を結びつつある様に、見えます。ムンバイに拠点を置く証券大手コタックによると、2012年中に新たに供給可能になる発電能力は2万6,000メガワットを超え、2011年の新規増加分の2倍近くになる程です。

ただ困った事に、石炭の国内生産量が需要を大幅に下回っているため、新設の発電所が稼働を始めても、燃料不足で発電できないリスクまでもがあります。また、発電を開始できても、老朽化した送電網のせいで電力が送れない事も多いのが、現状です。

インドの発電会社は、28ある州の電力局に電力を販売することを義務付けられていますが、電力局の多くが実質的には破綻状態にあります。つまり、発電会社は料金の支払いを受けられるのか、そして自社の債務を返済できるのかという問題に、直面しているのです。

問題解決を急ぐインドのシン首相は今年4月に、州の支援を受ける鉱業会社に対して発電会社への燃料供給を命じ、違反者は処罰すると発表しました。その結果コール・インディアは輸入を増やすしかなくなり、インドの国際収支はその分悪化しました。インドルピーの下落圧力も、着実に増大中です。

インドには確かに世界の採掘可能な石炭埋蔵量の約7%がありますが、2011年に高価な外国産石炭を50億ドル(約3,900億円)分も輸入し、今年はさらに大幅に増えそうです

政府の対応は当然求められていますが、前途多難です・・・・

送電網自体の問題も、何ら解決されていません。インドの信用格付け機関クリシルの試算によると、送電中の電力損失は2011年だけでも約4,000億ルピー(約5,600億円)に上った可能性があり、そのために各州の電力公社の債務は3兆ルピー(約4兆2,000億円)に達しています。

石炭は供給されず、州の送電公社からの支払いもありません。どちらの側の公営企業も義務を果たしていない為です。民間の電力会社の事業基盤はとっくに崩れていて、問題解決の手段を持っているのは、今や政府だけです。

銀行が不安視しているのはこの点です。ムンバイの大手銀行スタンダードチャータード銀行幹部のマールク・アダジャニア氏によると、2008~11年の4年間にインドで新規融資の半分は、インフラと電力に投じられました。今や電力部門に融資された5,000億ドル(約39兆円)もの巨費の返済が危ぶまれているのです・・・・!!

もし解決策が見付からなければ最悪の場合、電力部門への融資の90%がデフォルト(債務不履行)する可能性があり、その場合、「銀行の経営状態に重大な影響が及ぶ」とクリシルの幹部、パワン・アグラワル氏は指摘しています。

結局、世論とは反対の電気代値上げと公的な資金援助が、避けられません・・・

これら数々の入り組んだ問題を回避する道は、確かに容易には見つからないでしょう。政府の最初の課題は、先日の大停電の様な事態を繰り返さないことです。

この約束を果たすには、7月末の大停電の一因となった送電会社ナショナルグリッドから、電力を過剰に取り込む州に対し規制と罰則を強化するなどの、多様な対策が必要です。

実は今回のインドの巨大停電の一因は、ただでさえ不足気味の電気を、各州が奪い合ったからでもあるためです。

各州の電力公社は大至急、送電設備の更新計画を加速すべきです。インド政府によると、その為には今後5年間で約3.1兆ルピー(約4兆4000億円)もの巨額投資が必要です。

それでもこれらの対応だけでは、電力部門が抱える大きな問題を回避するには不充分です。多くの州の電力局は、発電会社への支払いや送配電インフラへの投資に充てる資金さえも、欠いています。現在でも損失を出していない州は、グジャラート州と西ベンガル州の2州しかありません。

しかも、インド国内の石炭が増産されるきざしも、今でもほとんどありません・・・・。そんな中、多くの発電会社は独自に対策を取り始めています。例えばインド有数の巨大

企業グループ、リライアンスグループの会長アンバニ氏は、燃料確保の問題を理由に、

インド中部のアンドラ・プラデシュ州で計画中の超大型発電所の建設を停止してしまいま

した・・・・。

電力問題が解決しなければ、経済成長は確実に鈍化するばかり・・・・

破綻したインドの電力システムを修復するには、長い時間と、インドにしては相当巧みな政策と、巨額の投資が必要です。

「インドの経済成長は信頼できる電力にかかっている」と指摘するのは、世界的に有名なリスクコンサルティング会社のユーラシア・グループのアジア担当責任者、デイビッド・スローン氏です。彼は、「インド政府が、電力部門が抱える広範な問題のためにもっと幅広い(総合的な)対策を取らないと、インドの(今後の)経済成長は、年率4~5%にとどまることになる」と予測しています。

・・・・・確かにこれは無視できないリスクですね。ピーク時の半分にまで成長ペースが低下しそうです。人によってはこれをハードランディング(失速)という事でしょう・・・・。

今回は、以上になります。

今回の様な資産形成、海外投資に関するリスク情報についても、このブログでは適切と思われる時期に、随時取り上げていく方針です。それでこそ、あなたにとっての「読めば資産形成の力になる 個人投資家の世界の経済・金融研究日記」に成れると、思っているからです。

【※】当ブログ記事は、AOIA 株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料は、飽く迄もAOIA株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。当資料中に記載している内容、数値、図表、意見等は資料作成時点のものであり、今後予告なく変更することがあります。当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。当資料をもとにお客様が金融商品取引行為を行われた場合、金利、通貨の価値、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として生じる利益あるいは損失は、すべてお客様に帰属します。


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