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ユーロ圏の景気低迷が続く「分かりやすい理由」とは?

  • 投稿日:2014年10月29日

構造改革くらいでは解決しないユーロ圏の不景気

 ユーロ圏の現在の政策が力強い景気回復をもたらす可能性は果たしてあるのだろうか?私の答えは「難しい」だ。ユーロ圏は2013年に世界全体の国内総生産(GDP)の17%を生み出しているだけに(市場価格ベース)、この答えは世界の景気と投資環境にとって大きな意味を持つ。日欧ともに景気が停滞しているため、世界の注目は、「米国の経済成長率3%以上が定着するか」と、「中国の経済成長率が7%台を維持できるか」に、集中している。

 ユーロ圏の経済戦略を決めるのはドイツである。この戦略は(1)競争力向上のための構造改革、(2)財政規律(原則赤字は極力排除)、(3)金融緩和 の3要素から成っており、これまでのところ適切な需要を創造できていない。実際、2014年第2四半期のユーロ圏の実質需要は、2008年第1四半期のそれを5%も下回っていた・・・・。

 フランスとイタリアはともに、自国とユーロ圏全体の経済成長に再び火をつける手段の1つとして「構造改革」を加速するよう促されている。ここでユーロ圏全体の成長がかかわってくるのは、この2国を合わせればユーロ圏全体のGDPの38%を生み出していることになり、ドイツ(同28%)を上回るからだ。この2国に奨励されている改革プログラムには、労働市場の自由化が盛り込まれている。つまり、ドイツで2003年から2005年にかけて導入され、今日の比較的良好な労働市場の原因になったと言われることの多い「ハルツ改革」を実行するよう促されているわけだ。

話題の「ドイツの改革」でも景気は加速せず!

しかし、ドイツのこれらの改革が成し遂げなかったことの1つが、ダイナミックな総需要の創出だった。2004年第2四半期から2014年第2四半期にかけて、ドイツの内需は物価を考えた実質ベースで11.2%しか増えていない。年率に換算すれば1%の伸び率だ。もっとひどいことにならずに済んだ格好だが、「機関車」の役目を果たしてきたとはとても言えない。このことは、ドイツの部門別資金過不足(政府、民間、外国の3部門における収入と支出の差額)の推移を振り返るとさらにはっきりする。ドイツの民間部門は2000年代前半の改革に対し、資金余剰の幅を大きく拡大するという反応を示した。つまり、支出をぐんと減らして貯蓄を増やしたのだ。

 民間の国内需要を増やすという観点から見るなら、改革はほとんど成果を上げなかった。それどころか、ドイツは外需に大きく依存するようになった。中国に根を張った強大な自動車産業などの世界規模のドイツ企業のネットワークが強力な武器になったのは、確かだろう。しかし、緊縮財政が民間の支出を一気に増加させることもなかった。

 ドイツと同じような労働市場改革をフランスやイタリアで実行すれば需要の拡大が促されるとの考え方は、恐らく楽観的すぎるだろう。それ以前に、製造業を中心に、企業の競争力がドイツと比べて相当見劣りする。

改革が何も生み出さなかった訳ではない。ドイツの経済成長は意外と低かったにもかかわらず、失業率は低い。英国も、金融危機後の経済成長がドイツ以上に弱いにもかかわらず、失業率は比較的低い。いずれのケースも、労働市場改革が、大きなショックの悪影響を、実質賃金の伸び悩みや下落という形で国民全体で負担するように促したのだ。その結果ドイツは、「強大な企業、財政が健全な政府、それほど豊かではない国民、中途半端な景気」が、慢性化している。この種の調整の症状の1つが生産性の停滞だ。ドイツの産業界では実は、労働効率を意味する生産性は2007年以降上昇していない。英国の生産性もさえない。

ユーロ圏全体の経常黒字をドイツ並みに出来るか?

 結局、労働市場改革は需要の拡大をそれほど促進しないのだ。ドイツの場合、需要増加の相当部分は外国からもたらされた。これをユーロ圏全体で行った、一体どうなるのだろうか? 理論的には、ユーロ圏は経常黒字の対GDP比をドイツ並みの水準に引き上げようとする可能性がある。その場合は、2013年の実績(3000億ドル)を大きく上回る9000億ドルの経常黒字を目指すことになるだろう。こんな黒字は維持できない。過剰生産力に苦しむ中国をはじめとする世界の他の国々が吸収し切れないだろうし、ユーロ相場が上昇して貿易黒字拡大を抑える可能性が高い。しかし奇妙で不幸な事に、数年前のギリシャ危機の頃から、メルケル独首相を中心とするドイツ政府が他のユーロ加盟諸国に時には丁寧に、苦境下にある他に国に対しては時にはやや冷酷に要求して来たのは、実はこういった事だったのだ。

構造改革で足りないところを補うのであれば、ユーロ圏内の需要を増やすのが適切である。いずれにしても、内需の拡大は、超低インフレとデフレ(物価下落)の可能性がもたらす多様な困難をぬぐい去るのに必要だ。現在のドイツのコアインフレ率(1.2%)では低すぎて、調整が満足に進まない。従来型の金融政策が限界に突き当たっていることから、採り得る選択肢は、従来型でない金融政策か拡張的な財政政策となる。ドイツはどちらも毛嫌いしている。しかし、ドイツは資金の避難先になっていることもあり、極めて有利な金利で資金を借りることができる。ドイツ国債30年物の現在の利回りは1.8%でしかない。欧州中央銀行(ECB)がインフレ目標を達成すると仮定するなら、ドイツの実質長期金利はゼロ%になる。

超低金利は「借りてくれ!」という市場の叫びの反映だが・・・・

 そのように無視できるほどのコストで資金が借りられるのであれば、財政赤字のコストに対する見方も変わらなければならない。ドイツは既存の債務をこの低金利で借り換えるべきであり、かつ、新たに資金を借りて公共投資を増やすべきなのだ。最近話題の「欧州中央銀行(ECB)によるユーロ加盟国の国債購入などによる追加金融緩和」も、実は似たようなものだ。

金利に目を向けずに赤字と債務のことばかり考えるのは理にかなっていない。それと同じく、フランスの財政赤字がルールに違反するか否かに対する注目はやや過剰だ。フランス国債10年物の利回りでさえ、現在は1.1%にすぎない。市場は「借りてくれ!」と叫んでいるのだ。ユーロ圏は、リスクを取って景気の拡大に踏み出すべきである。今はその方が安全だ。

 

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今回は、以上になります。AOIAフェローのDataと小勝負からでした。

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