人生を豊かにする経済とお金の学校 グローバル資産形成学院

「スイスフランショック」が日本の財政と金融に与えそうな「重要な課題」とは?

  • 投稿日:2015年1月30日

今回は、やや壮大な内容です。一見些細な問題に見える「スイスフランショック」が、実は今後の日本の財政と金融に厄介な課題を投げかけたというものです。やや違和感ある方もいるとは思いますが、実は投資のプロ向けのメディアなどでは、この手のニュースやレポートなどは、着実に増加中です。つまり、意外と現実的な課題なのです。

 2015年1月15日、スイス中銀(SNB)は1ユーロ=1.20スイスフラン(以下フラン)に設定していたユーロフラン相場の下限(フランの上限)を撤廃すると発表。これを受け、同日のユーロフラン相場は1.20フラン近辺から一時0.85フランまで急落(ユーロ下落・フラン上昇)。フランから見ると、対ユーロ上昇率は40%を超えた。対ドルや対円でも一時35―39%のフラン高となった。2015年1月19日朝の東京市場でも依然、これら主要3通貨に対して、政策変更直前との比較で20%程度上昇した水準を維持していた。

 1ユーロ=1.20スイスフランの上限導入は、2011年9月に始まった。多くの投資家や金融機関などは、これが半ば半永久的に続くものと思い込んでいたようだが、それはスイスの立場を充分に考えてはいない「過剰な期待」も含まれていたようだ。しかし、スイス国立銀行(SNB、中央銀行)は、3年4カ月もの長期にわたってユーロフラン市場への介入を続けた。中途半端に長い期間、実際に行われたため、「半ば当たり前でこれからも続くもの」だと、多くの投資家や金融機関などが思い込むには、確かに充分な長さになりつつあった。

結局、最終的には政策が維持できなくなる結果となったが、その後の展開には日本の金融政策を考える上で興味深い点が2つあった。

 

巨大なスイス国立銀行(SNB、中央銀行)の外貨建て資産の含み損・・・・

 第一に、ここまで長く政策を引っ張った結果、為替差損などのリスクが急拡大していたにも関わらず、徐々にではなく、一気に政策を変更したことである。SNBのバランスシートの規模は、過去3年以上ものユーロ買い介入を受けて、スイスの名目国内総生産(GDP)の8割程度にまで膨れ上がっていた。そして、さらに重要な点は、資産の91%が外貨となっていることだ。言うまでもない事だが、為替相場は日々変動し、時価評価すれば巨額の含み益がある時も、含み損がある時もある。実はこれは、数百兆円規模の日本国債を猛烈な勢いで買いまくっている日銀と、よく似ている。

 これだけのリスクを抱えながら、SNBがなぜ政策を徐々に変更するのではなく、一気に転換することにしたのかは理解に苦しむ。少し為替に詳しい人が普通に考えれば、「SNBがこれだけリスクを膨らませているのは、すでにユーロを導入するか、欧州中央銀行(ECB)の金融政策に追随することを決めているため」と、思うだろう。それなら最終的には、少なくても為替リスクは、それなりに抑えられそうだ。有名な為替や金融に関する基本ルールに、「金融政策のトリレンマ」(自由な資本移動、固定相場制、独立した金融政策は同時に2つしか実現できない)を考えれば、SNBがこの数年間行ってきたことは、「独立した金融政策を放棄するのを覚悟している」としか思えなかったのだ。

 そして実際、SNBは昨年12月18日にマイナス金利を導入し、ECBに追随しているかのような動きを見せていた。しかし、それでも結果的には、独立した金融政策を維持するために、突然、為替相場に対する政策を変更した。かなり理解に苦しむ行動であるし、実際にスイスフランは高騰してしまい、外貨準備の為替差損は時価評価で見れば拡大したが、そうした行動を取らざるを得なかった理由が、何かしらあったのだろう。単純計算では、現時点でのSNBが保有する外貨建て資産の含み損は、名目GDPの15%近くに相当する・・・・。これは日本では、約七十兆円の巨費だ。

 第二点目は、SNBによる政策変更後のフラン上昇率が非常に大きかったことである。先進国の為替相場で、一時的にせよ一日で40%も変動したケースは他にはないのではないだろうか。このことは、極端な政策は市場の歪みを大きくし、いざ政策を変更しようとすると、その反動で市場の動きが爆発的に大きくなってしまうことを示唆している。SNBもここまで大きな変動になるとは思ってもみなかったから、一気に政策変更を行ったのかもしれない。しかしこの結果、「中央銀行は時には嘘をつく」とのイメージや評価が、強まってしまった。そこまで言うのは酷にしても、「どこまで信用して良いのか、確信が持てない」のが、私も含めた多くの人たちにとっての現実ではないだろうか?ユーロや英ポンドとも密接な関係がある「スイスフランショック」の今後の展開には、注意を要する。厄介な事に、為替相場を大きく左右するインフレ率や(政策)金利には、日米の中央銀行の金融政策や中国の景気やインフレ率、原油価格なども、しっかりと関わっている。これらが分かれば経済と投資は概ね分かると言っても良いほど、オールスターが揃っているのだ。だからこそ、私は今後も継続的に、このテーマについて、調べ、考え、いずれまた何らかの形で、発表するつもりだ。

『最近のマーケット情報や実用情報を無料で知りたい方はこちらをクリック』

https://argo-navi.net/mielca_aoia/PublicMailMagazineEntry.aspx?no=3

========================================

<市場の目が日銀に厳しくなる可能性>

今回のSNBによる突然の金融政策変更と、その結果としてのフラン急騰は、スイスの実体経済や世界の金融資本市場に大きな影響を与える可能性がある。今回スイスで発生したことを日本に置き換えてみると、財務省・日銀がドル円相場を100円にずっと維持するために介入を続けてきたところ、急に政策を転換した結果、その日のうちに70円まで円高が進み、その後も83円近辺で推移しているような状況となる。

 ちなみに、スイスの年間輸出額(財のみ)は名目GDPの32%となっており、14%程度の日本よりもずっと大きい。スイスの方が日本より自国通貨急騰の悪影響を強く受けると言えるかもしれない。また、影響はスイス経済だけでなく、その他幅広い金融資本市場に及ぶ可能性があり、その影響がこれから徐々に明らかになってくる可能性がある。ユーロや対ドルでスイスフランのショートポジションを保有していた投資家は多かったと考えられる。特に欧州などでは、投資家が被った損失が予想以上の多額に上る可能性も排除はできない。ポーランドなどの東欧諸国では、超低金利だったスイスフランで住宅ローンを組んだ家庭が多く、まだ返済中の人も多い。今後はやや意外なところまで、影響が及びそうだ。

 こうした状況下、今後の世界の金融資本市場が全体的に不安定になる可能性がある。ギリシャや英国などの政治的不透明感や、「イスラム国」などによるテロに対する懸念、中国の不動産関連企業の社債の問題も投資家の不安心理を増長してしまうリスクがあり、そうなれば、円ショートポジションの巻き戻しが続き、さらに円高が進む可能性がある。米国の株価も、意外と不安定だ。

 加えて、SNBの突然の政策変更は、今後、日銀の金融政策に対する市場参加者の見方に影響を与える可能性もある。なぜなら、先進国中銀の中でSNBの次に極端な金融政策を行っているのは日銀だからだ。先述した通りSNBのバランスシートの対名目GDP比は83%だが、日銀のバランスシートはその次に大きく、名目GDPの62%となっている。

また、日銀がこのまま現在コミット(約束)している速さでバランスシートを急拡大していけば、今年末には名目GDP対比76%程度と、SNBにかなり近いところまで拡大することが予想される。米連邦準備理事会(FRB)やECBを含む他の主要国中銀のバランスシート対名目GDP比がおおむね10―20%台であることを考えると、SNBと日銀だけ規模が突出しているのが分かる。繰り返しになるが、日本国債の時価も、意外と不安定だ。「債券の金利と価格は逆方向に動く」ので、今後日本の金利が上昇を始めた場合、実は日銀の財務評価にも負担となる。金利が下がり過ぎた結果、日銀以外に国内の日本国債の買い手が急減していることも、気がかりだ。

『最近のマーケット情報や実用情報を無料で知りたい方はこちらをクリック』

https://argo-navi.net/mielca_aoia/PublicMailMagazineEntry.aspx?no=3

========================================

保有資産約3%評価減で、日銀は実質債務超過に転落!

今後、市場参加者はSNBの次に極端な金融政策を行っている日銀の金融政策の持続性に対して、疑問を持ち始めるかもしれない。これまではスイスや日本だけではなく、FRBやECB、イングランド銀行(BOE)も含めた各国中銀が行ってきた非伝統的金融政策は、賛否両論はあったとしても、どちらかと言えば、正しく、必要なこととして市場に受け止められてきたと考えられる。

 しかし、2015年1月15日のSNBによる措置とその後の市場の反応を受けて、今後は非伝統的金融政策に対して懐疑的な見方が高まってくるかもしれない。そうなると、次に政策の維持が困難になるのは日銀で、「日本株の賞味期限はあと数年か?」と意識し始めた投資のプロも、実は多い。私は日本株だけの投資には、実はあまり賛成できない。

 日銀の純資産は資産の大きさに比べて非常に小さい。資本金はわずか1億円であり、法定準備金は2.9兆円しかない。この他、債券取引損失引当金、外国為替等取引損失引当金が合計3.8兆円程度あるが、これらを合わせても、総資産に対する比率は2.2%しかない。つまり、保有資産が3%程度毀損(きそん)しただけで、日銀は会計上は実質債務超過に陥ることになる。

日銀は国債を満期まで保有するのだから問題ない」との考え方もあるかもしれない。しかし、SNBも今までの政策を続けようと思えば、技術的には続けられたはずである。それでも何らかの理由で終了せざるを得ず、SNB自身や一部の民間企業、投資家のバランスシートを実際に著しく毀損(きそん)する結果となってしまった。日銀もどこかの時点で現在の政策が継続不可能となった場合に、日本には一体何が待っているのか?あまり良くないニュースであるのは確かだろうが、突き詰めて基本から理解し考え抜いている人は、ごく一握りだ。いい加減な内容の出版物は、日経新聞などにも、散見される。正直なところ、知名度や人気と内容(レベル)は、意外と無関係だ。お金を出してまで騙されたい人は、買うと良いだろう。

1930年代の日銀による国債引き受けが、結局敗戦後の超インフレにつながったのは、出口政策に失敗したからだった。したがって、今回は、極端な金融政策からの出口政策に失敗したSNBの直近の事例をきっかけに、日銀は出口政策に対する考え方を今から市場に対して明確に説明すべきではないだろうか。

 日銀の場合、政策目標(コアインフレ率2%)が達成された時、現在の政策を単純に終了すると、国債価格は急落することになりかねない。その場合、損は一体誰がかぶるのだろうか?つまり、日銀が行っている非伝統的金融政策は、SNB以上に出口政策がより重要なのだ。

非伝統的金融政策の持続性に対して市場参加者が懐疑的な見方を強めつつある中、しっかりとした出口政策を示さなければ、今後の政策の持続性に対して市場参加者の信任が得られなくなるリスクが高まるだろう。実はこうした問題は、あのモーニングスターの朝倉社長も、かなり意識して懸念しているのだ。そしてその結果明らかな事はやはり、「米国などの外国の資産を、外貨建てで持とう」という、単純な話に落ち着く。そしてその「国際分散投資の低コストな特急券」こそが、現在世界的に見て急拡大中の、上場投資信託(ETF)なのだ。私が今月執筆しAOIA会員様向けに公開済みの「ETF特集のメルマガ」は、実はこういった問題意識を背景に、誕生した。お読みになれば、インデックス(指数)投資の優位性やETF(上場投資信託)の概要、サンプルとしての多数のETF(上場投資信託)の具体名や内容の確認なども、出来ます。

 

『最近のマーケット情報や実用情報を無料で知りたい方はこちらをクリック』

https://argo-navi.net/mielca_aoia/PublicMailMagazineEntry.aspx?no=3

 

「AOIAのETFのメルマガ」にもご興味ある方は、こちらをどうぞ。

『人生を豊かにする経済とお金の学校 AOIAアカデミー【無料ガイダンス】』

日時:2015年02月21日(土) 17:00~18:30

場所:東京都港区虎ノ門

AOIAアカデミーの学長は弊社代表で、本ブログに関する疑問点にも、ご回答できると思います。

詳しくは、こちらをどうぞ。

https://argo-navi.net/mielca_aoia/PublicSeminar.aspx?gId=1&sId=1&eId=1479

========================================

為替相場にご興味ある方は、お手軽なこちらのイベントをどうぞ。

『為替ゼミナール 【毎週金曜日に開催される FXの勉強会】」

日時:2015年02月06日(金) 19:00~20:30

場所:東京都港区虎ノ門

費用:FXトレード実践講座受講生:無料/一般の方:500円(会場代&ドリンク代)

詳しくは、こちらをどうぞ。

https://argo-navi.net/mielca_aoia/PublicSeminar.aspx?gId=1&sId=1&eId=1470

========================================

AOIAのFXコースの全体像を知りたい方は、こちらの無料イベントをどうぞ。講師はみな有名な実力派のベテランばかりです。

「FXトレード実践講座 無料ガイダンス」

日時:2015年02月19日(木) 19:00~20:30

場所:東京都港区虎ノ門

詳しくは、こちらをどうぞ。

https://argo-navi.net/mielca_aoia/PublicSeminar.aspx?gId=1&sId=1&eId=1483

========================================

AOIAフェローのDataと小勝負からでした。今回は、以上になります。

【※】当ブログ記事は、AOIA株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料は、飽く迄もAOIA株式会社のスタッフが個人的予測に基づき作成した資料であり、その正確性・完全性を保証するものではありません。当資料中に記載している内容、数値、図表、意見等は資料作成時点のものであり、今後予告なく変更することがあります。当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。当資料をもとにお客様が金融商品取引行為を行われた場合、金利、通貨の価値、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として生じる利益あるいは損失は、すべてお客様に帰属します。


  • グローバル資産形成学院WEBキャンパス開校 ネットで学べるオンライン講座
  • WEBキャンパスで開催中の講座はこちら
  • WEBキャンパス会員登録はこちら
  • 資産形成力要請コース